新撰組と妖狐ちゃん!


「じゃあ、お客さん待たせてるから、
日向ちゃん…じゃなかった、杏子ちゃん、いってらっしゃい♫」


「はは…逝ってきます。」


笑顔(黒)でお見送りされたあたしは、
嫌な予感しかしない襖の前に正座した。


後ろには
鈴ちゃんという名の恐怖が←


前には、
一人で戦場に行くという恐怖が←


鈴ちゃんは女の武器なら持って行っていいよ!と言ったけど、


…そもそもあたしにその武器は備わっているのだろうか。(泣)


あたしははぁ…とため息をつき、
襖に手を掛けた。


後ろも前もダメなら、
進んだ方がマシだよね、うん。


と、自分に言い聞かせる。


…あれ、横に逃げ場があるじゃん。


とか思ったけど、
きっとそこも鈴ちゃんの支配下なので、
逃げるのは困難であろう←


あたしは意を決して、
スーッと襖を開けた。


そして、この5日間で何となく様になってきたお辞儀をする。


そして、


「失礼します。杏子どす。
どうぞよろしゅう…








…失礼しました。
お座敷を間違えたようで。」










この戦場で死ぬか、
鈴ちゃんに殺されて死ぬか、
それは鈴ちゃんの方が断然マシだと
瞬時に判断し、


微笑をして丁寧に襖を閉めた←


というか、これは逆に鈴ちゃんが殺られるのが正統だと思うのはあたしだけ?
…いや、そんな事はしないけどさ。


あたしは静かに襖を閉めた後、
鈴ちゃんを振り返った。


「あれ、日向ちゃん、
戻ってきたらダメだって言ったでしょ?」


さっきと同じ黒い笑顔の中に
少し焦りが見え隠れしている鈴ちゃん←


鈴ちゃんだ…
絶対鈴ちゃんの仕業だよ…


鈴ちゃんの黒い笑顔にあたしは確信した。


「…やってくれるねー、鈴ちゃん」


あたしは黒い笑顔で微笑んだ。


すると、


「え、ちょ!?」


鈴ちゃんの目からぶわっと涙が溢れ出した。


「ご、ごめんねぇ…だってぇ…
日向ちゃん辛そうだったからぁ…(泣)」


「わー!ごめんって!怖かった!?
別に鈴ちゃんが悪い訳じゃないからね!?鈴ちゃんがあたしの為にしてくれたんでしょ?」


鈴ちゃんに悪気があった訳じゃない。
本当にあたしの事を思ってやってくれた事なんだろう。


さすがにここで泣かれたら困るので、
あたしは必死に謝った。
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