新撰組と妖狐ちゃん!
「あ"!?さっき、まともに話をしようとは思わないのかって言ったのはテメェだよな、土方さんよぉ?」
あたしは顔に青筋を浮かべながら
さらにひねり上げた。←
わざわざ親切に、利き腕じゃない左腕にしてやっただけでも感謝しろボケ。
「痛ってぇ!!違ぇよ!!
俺が斬った刀傷見せろっつってんだ!」
「言葉が足りねぇんだよ!!!
省略しすぎだボケ!!!つーか、んなもんとっくに治ってるわ阿呆!!」
「あ"ぁ!?んなもん見てみなきゃ分からねぇじゃねぇか!オラとっとと脱げ!!」
そう言って、着物の衿元をつかんでくる土方。
あたしも負けじと、
衿元を掴んでくる土方の手を抑えながら
土方の胸ぐらを掴んだ。
そんな状態で暴れたら、
いとも簡単に着物は脱げるという事は
全く頭には無かった←
「このクソ変態土方ぁああ!!!」
なんて叫びながら暴れていると、
「!?」
ふと土方の動きが止まった。
そして、とある一点を、
悲しそうな目で見ていた。
あたしは、
その視線の先を追った。
すると、
「おい、土方どうした…って、わぁあああああああ!!!???」
あたしの左肩の部分が、
ガバッとはだけていた←
あたしはすぐさま
着物をきちんと羽織った。
すると、
グイッと引き寄せられたかと思うと、
「…っ」
またもやあたしは土方の腕の中に
閉じ込められた。
そして、
「…っ、すまねぇ…」
土方は、
土方らしからぬ震えた声で呟いた。
土方が見ていたのは…
未だに地味に残っている刀傷。
…いや、傷は治ってるけど、
痕が消えてないだけ←
だから斬られた事は
どうってことないんだ。
「…あのなぁ、あたしを誰だと思ってんだ土方。あたしは妖怪だぞ?こんな傷どうってことないんだよ。むしろあの時斬ってくれなかったら…」
…土方を殺していたかもしれない。
あの時の事を思い出すと、
手が震える。
こいつらを斬ったこの手が。
あたしは抱きしめられながら
下を俯いた。
「…それに、謝るのはあたしの方だ。
あの時、楓月に操られてたとはいえ、あたしは本気でお前らを殺そうとしてたんだ。楓月の術に完全に飲み込まれてしまってた。
…まだまだあたしは弱いんだよ。
仲間を守れるお前らみたいに強くない。だから…」
一緒にはいられない。
そう言おうとしたが、
土方に遮られた。
「だから一緒にいられねぇってか?
馬鹿かテメェは。俺らの事を仲間だって思うなら、何も考えずにただ居ればいんだよ。皆で支え合うのが仲間だろ。」
「あたしの事…まだ仲間だって思ってくれるか…?」
あたしが小さく呟くと、
土方がはっきり答えた。
「ったりめぇだ。
俺らは仲間で、家族だ。」
「…家族、か…」
…今まで心の中にぽっかりと空いていた穴が、ぽわっとあったかいもので埋められた。
久々に感じる『家族』という存在が、
家族を失ってぽっかり空いた穴を、
塞いでくれたんだ。