新撰組と妖狐ちゃん!
沖田に軽く噛まれた肩を押さえ、
後ろに飛び退いた。
「あ、あたしは食べ物じゃないんだけど!?」
歯型付いてるし!!
酔ってるよねコイツ!
絶対酔ってるよね!?
けれど、あたしの目の前の当の本人は、
全くそんな感じではなく←
「え、日向が食べてもいいって言ったよね?」
相変わらずの黒い笑顔で言った。
「いや、食べるって、あれですよね?
朝ごはんですよね?」
あたしが顔を引きつらせて聞くと、
「んー?日向という名の朝ごはん。」
…おい、
とんでもない答えが帰ってきたよ?
「沖田…テメェ、人食い人間か…!?」
…。
「…。なにそれ。」
「…。何だろう。」
人食い人間って…
つーか、あたし人じゃないわ。
ということは、妖食い人間?
何て馬鹿な事を考えていると、
沖田がはぁ…と溜息をついた。
「あのね?食べるってゆーのは…」
「へ?…ちょ!?」
グラッと身体が傾いたかと思うと、
「…こういう事☆」
目の前には黒い笑みを浮かべた沖田と、
その後ろに天井が見えた。
「お、沖田サン、酔ってんだよね!?
酔っていると信じたいんだけど。
物凄く。」
拘束された腕と足をバタバタ動かしながら、目の前の沖田に言った。
が、
「残念ながら僕は至って正常だよ?」
「…デスヨネー」
薄々…というか、
気づいてましたよだいぶ前から!
「…とりあえず落ち着け。
そして、あたしの上から降りろっ!」
精一杯、沖田を退かそうと試みるも、
二日酔いの身体には、
そんな体力は残ってなかった←
すると、沖田は、下で焦ってるあたしを、余裕の表情で見下ろして言った。
「日向が悪いんだよ?
そんな格好で僕の目の前にいるから。
着替えて来ないと食べちゃうよって言ったじゃん。」
「はぁー??そんな格好って、
着物着てるだけ……って、うわぁ!?」
沖田の視線の先を追うと、
見事に肩丸出し、
胸元もあとちょっとでやばかった…←
「ね?美味しそう。」
「いや、美味しそうの意味が分からんっ!ちょっと離せよ!今すぐ着替えるから!!!」
つーか、せめて直させろーー!
沖田があたしの腕を掴んでいるため、
着物を直す事すら出来ない←
あたしは沖田を睨んだが、
沖田には効いていないらしい。
すると、
沖田はあたしの耳元に顔を寄せて、
「ねぇ日向、
昨日の事何処まで覚えてる?」
「…!」
そう囁いた。
あたしが固まっていると、
沖田の手があたしの頬に添えられた。
そして、
「僕が酒を飲ましたとこまで?
それとも、
…好きって言ったとこまで?」
カプ。
「っひゃ!?」
今度は耳をカプッと食べた。
「お、沖…!?」
恥ずかしさとくすぐったさで
顔が真っ赤になったあたしは、
必死に沖田をどかせようとした。
すると、
「…あれ。」
沖田は呆気なく
あたしの身体から離れた。
離れた事への安堵と、
呆気なく離れた事への疑問を
頭に浮かべていると、
廊下の方から、複数の足音と聞き慣れた話し声が聞こえた。
そして、襖を開ける音がした。
どうやら、この場にいなかった、
山南さん、斉藤、土方が帰ってきたらしい。
そういう事か。
た、助かった…
はぁ…と溜息をついて起き上がると、
沖田が小声で、
「今日はここまでにしといてあげる。
けど、次は本当に食べちゃうかもよ?」
「!?」
ニヤッと笑みを浮かべて言った。
「き、着替えてくる!」
あたしは、
この場にいるのは危険だと思い、
光の速さで座敷を後にした。
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「?総司、日向どうしたんだ、あんなに慌てて。」
「着物着替えてくるらしいですよー」
…少しは意識してもらえたかな?
これからの日向の反応が
楽しみな沖田であった←