咆哮するは鋼鉄の火龍
 立花と佐竹が話をしていると、溶接メットを被り左手をドリルではなくガスバーナに変えた姿の宇佐美がやって来た。

佐竹
「うおっロボット兵みたいだな」

宇佐美
「ロボット?そうですかー?ヘヘへ」

立花
「嬉しいのか?それで?復旧作業はどうだ?」

宇佐美
「ヤバいですよ、修理用の普通のガスボンベも酸素ボンベも間違って放り投げてるんですもん。

 各一本ずつしかないですよ?

 足りなくなったら電源車の電力貰っていいすですよね?

 電気溶接しますから」

立花
「ちょっと待ってくれ、このエアロバイクを使いたいんだ」

宇佐美
「あーこれは電力食いますからね、うちにも型式が違う稼働する奴が二台ありましたよね?」

立花
「機動兵器部にいた頃にね、お世話になってるんだ。

 整備を頼みたい」

宇佐美
「列車装甲の応急処置とこれの整備で、まあ多めに見てざっと八時間って所ですけど、何時間もらえます?」

立花
「じゃあ夜の十二時完了予定だな?

 大丈夫、今日はここで夜営するつもりだったから」

佐竹
「うしっ、じゃあ自分は念の為トラップを仕掛けてきますか」

宇佐美
「先に装甲からやっつけますね」

立花
「頼んだ。その間に俺は作戦の見直しをしてくる」

 三人は方々に散り、立花は指揮車に戻る所で、

 主砲車の甲板の上で鶏冠頭の二人が嬉しそうに音を立てて装飾に取り掛かかっているのを見逃した。

 
 低い禿げ山に夕日が沈み始めた頃、立花が箱根の管理していた時代に作られた発電所の地図を眺め考えを巡らせていると、捕らえた男を通信手の鍋島と一緒に監視してい計測長の片倉がやって来た。

片倉
「目が覚めましたよ」

立花
「今行く」

 立花が主砲車の扉を潜ると上半身を起こした本多が立花を見た。

ドクター
「ちょっとコックの所で粥でも作ってもらってくる。

 せっかく助けたんだ、殺すなや?」

 そういうとドクターが席を外しそこに立花が座った。

立花
「話せるか?」

本多
「まず仲間拾ってくれて感謝する。俺の治療も」

立花
「礼ならさっきのドクターに言ってくれ、きついだろうがいくつか質問に答えて貰らうぞ、先ずは発電所の兵力を具体的に言ってもらえるか」

本多
「今はどうか知らんが百人前後だ、防衛施設については細かい地図を作ってある。

 燃えて無きゃそれを取ってくればいい」

立花
「やけに素直なレッドキャップだな」

本多
「レッドキャップ?」

立花
「ああ、この部隊の首領だろ?

 こっちじゃそう呼んでるだ。
 
 赤いベレー帽と、怪物みたいな戦いかたに残忍性からな」

本多
「へーえらく買ってくれてるんだな、まあ協力的にもなるさ、お前等が俺達の最後の希望になるかもしれんからな」

立花
「希望?どういう意味だ?」

本多
「話は長くなるが安心していい、だれも発電所にお前達が来た事は報告しに行ってない。

 俺の部隊が来たら俺が話をつける。だから信用して聞いて欲しい」

立花
「それはこちらで判断する」

本多
「良かったぜ、俺がやられたのがただ馬鹿じゃなくて、聞いてくれ」

 そこから本多の話が始まり、後から来た佐竹も合流し話に聞き入った。

 本多の話はそこにいる箱根の人間の知らない情報ばかりが出てくるので理解するのに時間は掛かったが、本多が嘘をついているようには見えなかった。
 
 夜はふけていったが本多の話しは続くのだった。







< 10 / 70 >

この作品をシェア

pagetop