咆哮するは鋼鉄の火龍
 発電所制圧から1日後、変電所と発電所の間にあった最早機能していない敵の監視小屋から本多の部下達が戻ってきた。

 まだ本多達の反逆を知らなかった兵士は簡単に捕らえられ他の兵士と一緒に監禁された。

 立花は回収を頼んでいた無線機を発電所の指揮官小屋の物と合わせ鍋島に渡した。

立花
「これを車両に搭載して本部とやりとり出来ないかな?」

鍋島
「厳しいですね、これの有効範囲は狭いですし」

立花
「そーか、しょうがない本部への報告は佐竹に行ってもらうか」

佐竹
「しょうがないですね。じゃあまずトラックで変電所に行ってきます」

立花
「ガソリンが勿体ないからエアロバイクで行ってくれ、フル充電したら箱根までは行けるから。
 
 あと牽引列車を送ってもらってくれるか?
 
 警戒車両は直せるけど、六両目の仮設レールが乗ってる車両は本部で直した方が早いみたいなんで」

佐竹
「いやー乗ってみたかったんですよアレ、私達が乗ってたやつより上等なやつですしね、じゃあ要請だけして、私は箱根に向かえばいいですね」
 
 佐竹は嬉しそうに笑った。

立花
「ああ、親方に車両が壊れて不機嫌になると思うけど、弾薬も回してくれるように言ってくれます?これリストです。」

佐竹
「げー発電所落とすより厄介ですね、まあ、じゃいってきます」

 佐竹は肩を落としてバイクに股がり走っていった。

立花
「よーし、手の空いてる奴は力を貸してくれ、六両目のレールを下ろすぞ」

 明くる日の夜中頃、変電所から臨時の軍事列車が変電所の人員と物質を満載にしてやってきた。

 先立って黒田が待機させていたらしく佐竹が到着して直ぐに出発してくれたらしい。

 レール搭載車両がポイントで連結され捕虜達数名が乗せられ箱根本部に送られた。

 立花の指揮の元、残った捕虜達も使い塹壕や土嚢等の整備が行われ、宇佐美の指示で変電所からの応援部隊が北方へと送られていた電力を変電所へと送る為の切り替え作業を行っていた。

 鍋島は立花からの要請で主砲から全車両に向けて主砲発砲直前に赤ランプの発光で知らせる為の仕掛けを作っていた。

赤松
「よーは打つ前にこのボタンを押せばいいんでしょ」

鍋島
「いたずらに使うなよ」

赤松
「おお、読まれてた。

 一回!一回だけ!」

鍋島
「……」

赤松
「わっわかりましたよ」
 
 片倉は新しく作られていく守備施設を明記した地図をせっせと作成していた為、痔が悪化したとドクターに言った所、「お前の痔の状況も地図に書け、見たくない」と言われ、実際に書いて怒られていた。

 敵の反攻は無いと読んでいた立花は全兵士を守備に当たらせず、多くを次の作戦の作業に割り当てた。

片倉
「次の作戦?

 取り返して終わりじゃないんですか?」

立花
「こっちはほとんど無傷だしな、このままじゃ終わらないと思うけど」

片倉
「東名と停戦協定を結ばないんですか」

立花
「停戦協定を結ぶにしても、もう一頑張りしないと優位には立てないだろ?」

片倉
「本部はどう考えてるんですかね?」

立花
「そりゃ勝ち逃げ守戦方針一本だと思うけど…」

片倉
「何でです?」

立花
「今までと違って今回は敵がでかいし、ソーラーパネルさえ取り返せたらそれで良いとする人間が多いだろうしな。
 
 うちの幹部に根性座ってる主戦論派は少ないし」

片倉
「じゃあ黒田さんがひっくり返すと?」

立花
「俺と同じ考え方をしていて実行できるだけの力があればの話だけど」

片倉
「努力が無駄にならなければいいですけど」

 立花はこのままじゃ終わらないはずだと信じていた。
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