咆哮するは鋼鉄の火龍
箱根の地下には大きな空間が広がっていた。
旧い文明が終わり、新しい歴史が始まった対核兵器地下シェルターである。
それは世界崩壊以前に戦災を逃れる為、旧政府が『方舟計画』という名の政策を行い、標的にされやすい主要都市から離れる様に作られたシェルターの中の一つに過ぎなかった。
ただ、そこにはあらゆる生産ラインや浄水施設等と共に、大量の物質が保管されていた。
嵐の時代が去り、再度陽の目を見た人々が地上に作り上げた都市の心臓部となっていた。
地上都市からシェルターへと続く巨大なゲートを潜ると直ぐそこに、トンネルがそのまま工場となっている場所がある。
スチームパンクよろしく乱立するボイラー等の様々な設備の合間を縫うように鉄の足場が張り巡らされていた。
たまかけリフトのチェーンが精肉所を思わせる程に何本も垂れ下がっていた。
その奥に、今では何という意味か知る者がいない「安全第一」と書かれた大きな看板があった。
その看板横には新しく書かれた「兵器管理部」と刺繍された旗が掲げられ、また直ぐ下を工員達であろう男達が慌ただしく走り回っていた。
工場の中央には幾つか地上へと伸びる線路が敷かれており、軍服を着た一人の青年がその線路上にある「物」を足場から見下ろしていた。
青年は踊り場の手すりに両手をおき、まじまじと見つめ続けている。
それに気づいたスキンヘッドの工員らしき男が気付き近づいて行く。
スキンヘッドの男
「おい小僧っ!あそこになんて書いてあるか読めねーのか?」
男は兵器管理部の旗を指差しながら少年に迫った。
この男はスキンヘッドで金縁の眼鏡をかけ、上半身は裸で作業ズボンにサスペンダーという、いかにも屈強そうな風体であった。
スキンヘッドの男
「あの旗に書いてある文字は、勝手に俺の縄張りに入るな!引きずり回すぞっ!て意味だ。
分かるか?」
男は凄んで見せたが青年は笑顔で振り向いた。
青年
「ずっと見てても飽きないですね。
溢れる重厚感、惚れ惚れします」
スキンヘッドの男
「…ふんっ、ちょっとは分かってんじゃねーか。
いいか、あの子は俺の最高傑作だ。
上層部の連中が何度も工期を早めるように催促してきやがったが全部突っぱねて、長年かけて育ててここまで大きくしてやったんだ。
見た目倒しじゃないぜ、もちろん内面にも磨きをかけてな」
男はそう言うと愛おしそうに目線を線路上に向けた。
少し間が空き、青年は足を揃えて男に向き直った。
青年
「榊原部長、御挨拶が遅れまして申し訳ありません。
自分はこの度の北方遠征における戦闘指揮を任されました立花であります」
榊原
「まあ…知ってるよ、お前だろ?
前の北のやつらとの喧嘩で俺の可愛い戦車隊を囮にしてボロボロにしてくれたアホは」
立花
「戦車は榊原部長以下が必ず直して頂けると信じていたので、人的被害は最小限に押さえる事が出来ました。
感謝の言葉もありません」
榊原
「ふんっ、機械は替えが効くが人の体は直せんとでも言いたいのか?
てめーの片腕が砲撃でふっ飛んだらドリルに改造してやるよ」
立花
「別に僕だってただではやられませんよ、
ちゃんと元は取れるだけの戦果は挙げてみせます」
榊原
「この野郎、壊す前提で作戦立ててんじゃねーか!
はあー、ダメ男に娘を取られる親の心境が良く分かるぜ。
そんで?
ただ見に来たってわけじゃないだろ?」
立花
「ええ、指導して頂きたくって」
榊原
「どれだけこいつの事知ってるよ?」
立花
「龍級軍事装甲列車、
名称『火龍』
側面装甲平均12mm、
上部装甲平均9mm
現在の編成は進行方向から
7,7mm重機関銃二丁、
75mm副砲一門搭載の炭水車込みの警戒車
D50形改、自動空気ブレーキ、武装無しの機関車
7,7mm重機関銃二丁、57mm副砲一門、観測器等搭載の指揮車
第一層に居住区、第二層に主砲149,1mmカノン砲、砲身長は約6M、飛距離最大190000!の主砲車
6,5mm重機関銃二丁、7、7mm機関銃一丁、75mm副砲一門の電源車
6,5mm機関銃二丁、仮設レール搭載車
7,7mm機関銃三丁、75mm副砲一門の火砲車
以上七両編成。
機関車破損時に電源車の動力を使い多少の自走可能。
さらに先頭より一両間隔で反重力磁場発生装置のオマケ付っと、他にも一応前もって頂いた資料は全て覚えました」
榊原
「おい優等生、覚えてても使えなきゃ意味がねーんだよ」
右手がドリルの工員
「親方ーいっぱい兵隊さんが来ましたよ」
立花が右手がドリルの工員を見てギョッとしたのを見て、榊原は脅すような満面の笑みで立花を満足そうに見た。
立花は驚いたが、直ぐに気を取り直した。
立花
「黒田部長が召集を掛けました」
榊原
「ったく、勝手にぞろぞろ部外者を連れて来やがって、そんで?
こいつらに叩き込んだらいいわけか」
立花
「ええ通常の運用方法だけでなく、裏技まで」
榊原
「俺は技術屋で教育係じゃねーぞ」
立花
「でも壊されたくないんでしょ?」
榊原
「テメー」
「私からもお願いしますよ」
二人が振り替えると黒田がいた。
榊原
「お前といい、お前んとこの森といい、
この小僧もだが、俺の事なめてんだろ?」
黒田
「やだなー親近感があるってだけですよ、それにお互い幹部嫌いでしょ?
敵の敵は味方って言うじゃないですか」
榊原
「俺もお前も幹部だぞ?
それに敵の敵は敵だ、ぼけ」
黒田
「まーまーこの前の会議出なかったのちゃんと上手い事言っときましたから。
少佐、搭乗員の所に行ってよし」
榊原
「宇佐美、お前も先に行っとけ」
立花と右手がドリルの宇佐美は二人に敬礼すると一緒に階段を降りて行った。
榊原
「若いが、戦って来た男の目だ。
それに珍しく根性の座った野郎だな」
黒田
「良いでしょ彼?
やれると思いますか?」
榊原
「心配ならお前が行きゃーいーじゃねーか」
黒田
「乗り物弱くって」
榊原
「俺も年だな、
お前の腕章に鉄道の乗り物の管理部長してますって書いてある様に見えるわ」
黒田
「やー参ったな
管理だけですよ、
管理だけ。ハハハ」
旧い文明が終わり、新しい歴史が始まった対核兵器地下シェルターである。
それは世界崩壊以前に戦災を逃れる為、旧政府が『方舟計画』という名の政策を行い、標的にされやすい主要都市から離れる様に作られたシェルターの中の一つに過ぎなかった。
ただ、そこにはあらゆる生産ラインや浄水施設等と共に、大量の物質が保管されていた。
嵐の時代が去り、再度陽の目を見た人々が地上に作り上げた都市の心臓部となっていた。
地上都市からシェルターへと続く巨大なゲートを潜ると直ぐそこに、トンネルがそのまま工場となっている場所がある。
スチームパンクよろしく乱立するボイラー等の様々な設備の合間を縫うように鉄の足場が張り巡らされていた。
たまかけリフトのチェーンが精肉所を思わせる程に何本も垂れ下がっていた。
その奥に、今では何という意味か知る者がいない「安全第一」と書かれた大きな看板があった。
その看板横には新しく書かれた「兵器管理部」と刺繍された旗が掲げられ、また直ぐ下を工員達であろう男達が慌ただしく走り回っていた。
工場の中央には幾つか地上へと伸びる線路が敷かれており、軍服を着た一人の青年がその線路上にある「物」を足場から見下ろしていた。
青年は踊り場の手すりに両手をおき、まじまじと見つめ続けている。
それに気づいたスキンヘッドの工員らしき男が気付き近づいて行く。
スキンヘッドの男
「おい小僧っ!あそこになんて書いてあるか読めねーのか?」
男は兵器管理部の旗を指差しながら少年に迫った。
この男はスキンヘッドで金縁の眼鏡をかけ、上半身は裸で作業ズボンにサスペンダーという、いかにも屈強そうな風体であった。
スキンヘッドの男
「あの旗に書いてある文字は、勝手に俺の縄張りに入るな!引きずり回すぞっ!て意味だ。
分かるか?」
男は凄んで見せたが青年は笑顔で振り向いた。
青年
「ずっと見てても飽きないですね。
溢れる重厚感、惚れ惚れします」
スキンヘッドの男
「…ふんっ、ちょっとは分かってんじゃねーか。
いいか、あの子は俺の最高傑作だ。
上層部の連中が何度も工期を早めるように催促してきやがったが全部突っぱねて、長年かけて育ててここまで大きくしてやったんだ。
見た目倒しじゃないぜ、もちろん内面にも磨きをかけてな」
男はそう言うと愛おしそうに目線を線路上に向けた。
少し間が空き、青年は足を揃えて男に向き直った。
青年
「榊原部長、御挨拶が遅れまして申し訳ありません。
自分はこの度の北方遠征における戦闘指揮を任されました立花であります」
榊原
「まあ…知ってるよ、お前だろ?
前の北のやつらとの喧嘩で俺の可愛い戦車隊を囮にしてボロボロにしてくれたアホは」
立花
「戦車は榊原部長以下が必ず直して頂けると信じていたので、人的被害は最小限に押さえる事が出来ました。
感謝の言葉もありません」
榊原
「ふんっ、機械は替えが効くが人の体は直せんとでも言いたいのか?
てめーの片腕が砲撃でふっ飛んだらドリルに改造してやるよ」
立花
「別に僕だってただではやられませんよ、
ちゃんと元は取れるだけの戦果は挙げてみせます」
榊原
「この野郎、壊す前提で作戦立ててんじゃねーか!
はあー、ダメ男に娘を取られる親の心境が良く分かるぜ。
そんで?
ただ見に来たってわけじゃないだろ?」
立花
「ええ、指導して頂きたくって」
榊原
「どれだけこいつの事知ってるよ?」
立花
「龍級軍事装甲列車、
名称『火龍』
側面装甲平均12mm、
上部装甲平均9mm
現在の編成は進行方向から
7,7mm重機関銃二丁、
75mm副砲一門搭載の炭水車込みの警戒車
D50形改、自動空気ブレーキ、武装無しの機関車
7,7mm重機関銃二丁、57mm副砲一門、観測器等搭載の指揮車
第一層に居住区、第二層に主砲149,1mmカノン砲、砲身長は約6M、飛距離最大190000!の主砲車
6,5mm重機関銃二丁、7、7mm機関銃一丁、75mm副砲一門の電源車
6,5mm機関銃二丁、仮設レール搭載車
7,7mm機関銃三丁、75mm副砲一門の火砲車
以上七両編成。
機関車破損時に電源車の動力を使い多少の自走可能。
さらに先頭より一両間隔で反重力磁場発生装置のオマケ付っと、他にも一応前もって頂いた資料は全て覚えました」
榊原
「おい優等生、覚えてても使えなきゃ意味がねーんだよ」
右手がドリルの工員
「親方ーいっぱい兵隊さんが来ましたよ」
立花が右手がドリルの工員を見てギョッとしたのを見て、榊原は脅すような満面の笑みで立花を満足そうに見た。
立花は驚いたが、直ぐに気を取り直した。
立花
「黒田部長が召集を掛けました」
榊原
「ったく、勝手にぞろぞろ部外者を連れて来やがって、そんで?
こいつらに叩き込んだらいいわけか」
立花
「ええ通常の運用方法だけでなく、裏技まで」
榊原
「俺は技術屋で教育係じゃねーぞ」
立花
「でも壊されたくないんでしょ?」
榊原
「テメー」
「私からもお願いしますよ」
二人が振り替えると黒田がいた。
榊原
「お前といい、お前んとこの森といい、
この小僧もだが、俺の事なめてんだろ?」
黒田
「やだなー親近感があるってだけですよ、それにお互い幹部嫌いでしょ?
敵の敵は味方って言うじゃないですか」
榊原
「俺もお前も幹部だぞ?
それに敵の敵は敵だ、ぼけ」
黒田
「まーまーこの前の会議出なかったのちゃんと上手い事言っときましたから。
少佐、搭乗員の所に行ってよし」
榊原
「宇佐美、お前も先に行っとけ」
立花と右手がドリルの宇佐美は二人に敬礼すると一緒に階段を降りて行った。
榊原
「若いが、戦って来た男の目だ。
それに珍しく根性の座った野郎だな」
黒田
「良いでしょ彼?
やれると思いますか?」
榊原
「心配ならお前が行きゃーいーじゃねーか」
黒田
「乗り物弱くって」
榊原
「俺も年だな、
お前の腕章に鉄道の乗り物の管理部長してますって書いてある様に見えるわ」
黒田
「やー参ったな
管理だけですよ、
管理だけ。ハハハ」