咆哮するは鋼鉄の火龍
裏工作では黒田の勢力を止められないと悟った幹部の一部は、正攻法で立場を確立する他無いと判断し、この時浮上していた発電所の奪還作戦の指揮権をこぞって奪い合った。
この主導権争奪戦に当然参加すると思われた黒田はこれを静観する。
彼はこの間に現在行われている火龍による北方遠征作戦に必要な人員の割りだしと確保を行っていた。
未だに発電所には残存兵力が多数常駐し、援軍が来ている事を彼は知っていたのだ。
その為、ある程度の勝機を持って挑んだ他の幹部達は東名の猛反攻に合い奪還の失敗を繰り返し、黒田にお鉢が回って来た頃には既に火龍による進行準備を完了させていた。
この作戦から黒田は正式に北部遠征の指令官に任命され、表面化で本格的に動き出した。
水面下で彼は減っていくガソリンで勢力が小さくなっていく機動兵器部長に鉄道管理部のポストの確約と引き換えに、前回著しい活躍を見せた立花と佐竹を引き抜いた。
指令官の無能振りに士気を失っていた両名は奪還戦に勝機は無しと喜んで移動に応じる。
問題を起こし軍房に入れられていたチキンヘッズには恩赦を出し作戦当日までサウナ街を仕切らせた。
歩兵部長を連日接待し総殺傷数一位の凸凹トリオと歩兵部長の厄介払いでコックを獲得。
片倉と鍋島を鉄道管理部から抜擢し、町医者のドクターを軍事命令という力業で召集した。
宇佐美に関しては榊原が当所猛反対し自分が乗ると言い出したが、宇佐美が外に出て色々な機械もいじってみたいと榊原に何度も願い出て渋々了承した。
これは足しげく工場に火龍を見にきたと見せかけ、宇佐美に色々と吹き込んだのである。
黒田は立花に具体的な作戦考案書を提出させたが、黒田自身は戦術には疎く、結果として立花が前回に行った戦術と効果報告書を作らせた。
それに満足した黒田は立花に前線指揮を一任する事にした。
こうして結成された火龍隊は敵勢力の援軍部隊の撤退に合わせて出撃。
黒田の期待通り勝利したのであった。
実はこの防衛部隊の撤退を知らせたのは立花が救った茶屋というトレジャーハンターであった。
彼は誰よりも奥地に侵入し敵部隊の動向を観察、社長という犬を使い黒田に報告を行っていた。
その後西部へ偵察を命じられたが訳あって立花に救われる事になる。
佐竹の戦勝報告後、黒田はさらに動き出した。
民衆の支持を得る為に口売屋を抱き込むと東名討つべしの気運を高めさせ、軍幹部の懐柔に奔走した。
森は幹部の周辺をかぎまわりながら徹底的に粗を探し、黒田はそれを匂わせながら過半数の支持を確定させていった。
ここまで箱根は圧倒的軍事力を持って周囲のポリスを制圧していったが、北部は東名意外の大きな戦力があった為、保守的な考えをする幹部が大半であったのだ。
黒田が主戦方針であると気づいた他の幹部は森を引き抜こうと説得を試みたが「黒田さん意外に虎を飼い慣らせますか?」と一蹴した。
彼等は逆に黒田のブラックリストに載ってしまい徹底的に裏で叩かれ彼らはそれ以降沈黙を決め込んだ。
万全の体制を整えた黒田は発電所奪還戦の軍事報告会議に望んだ。
黒田
「以上が戦果報告であります」
斎藤
「じゃあ何か?
その小僧は自分で貴重な装甲列車を撃ったんか?」
予想通り黒田と相性の悪い斎藤大佐が食って掛かった。
黒田
「ええ、そうですよ」
斎藤
「そうですよじゃなかろうが!軍罰もんじゃろーが」
黒田
「では盗賊団に潰された車両数と戦死者名簿を読み上げましょーか?」
榊原
「間違いねー車両一台なら安いもんだ。
俺はむしろ誉めてやるべきだと思うがね」
斎藤
「じゃ何か?東名潰す為に箱根にも砲弾撃ち込むのを黙認しろっちゅーのか」
竹中
「それは極論過ぎるんではないかね?」
熱くなった斎藤を竹中大将が制した。
竹中
「この件はもういい、少人数で早急に勝ってくれたお陰で兵糧が減らずに済んだ。
民衆が英雄視しとるのに軍罰を断行すれば暴動が起きるぞ。
それよりも本日は黒田君から進言がある、大佐」
階級を重んじる斎藤はふてくされて黙った。
黒田
「あー本日は東名本部の制圧を目的とした侵攻作戦の進言をいたします」
この事を殆どの者が知っていた。
聞き耳を立てる事に長けていなければ幹部には到底なれないからである。
逆に腕一本でのしあがった榊原は初めてこれを聞き佐竹が焦って出発した理由に合点し椅子に深く腰を掛け直した。
逆に斎藤は身を乗り出して聞き入った。
竹中
「しかしな黒田、現在に我が軍の戦力では少々難しいのではないのかね?」
守衛方針の幹部から会議前に竹中への抗議があったようだった。
黒田
「主戦力は火龍一本です、皆さんにはバックアップをお願いしたいんです。
ここでやらなければ民衆の意に反しますし、北の資源を確保する為にも必要であります。
あと北のポリスからの通信が途絶えた理由も早急に確認しなくてはなりませんし」
竹中
「ああ、東名がいるから偵察も送れんし、トレジャーハンターも北からは来ない情報規制を敷かれているのは明らかだしな」
黒田
「一番の問題はそこなんです。
とにかく北の動きを把握しなければ我々がこの世界から取り残されるのは明らかです」
外部情報部長
「しかし油に火注ぐ形になったらどうするんですか?
我々は今まで鎖国状態を保ちここまで大きくなったんですよ?
北の勢力は未だに未知数ではないですか?」
斎藤
「お前ら外部情報部がまともな情報を持ってこんから、苦労しとるんじゃろが!
戦争反対なら子供でも言えるわ!
腰抜けはすっこんどれ!」
斎藤の一括に他の反対派の幹部は口を出すタイミングを失った。
黒田
「例外的に斎藤大佐の部隊のお力添えも少々頂きたいんですが?」
斎藤
「あほか!当たり前じゃ!お前ばっかりに旨い思いさせるか!」
竹中
「では取り敢えず作戦内容の確認を」
黒田は当分の間は火龍をもって前線を押し込み、変電所の守備兵の大部分を発電所まで移動させる事とした。
火龍の進撃に合わせ順次守備兵を北進させ防衛線を拡大。
攻略と平行し東名本部を攻略する部隊を箱根に集結させ、機会を待ち一気に前線に箱根から集めた部隊を送るという手筈を伝えた。
各部署からは砲弾の徴収と、また地下シェルターの遺産の使用許可を求めた。
斎藤
「おいっ俺の部隊は?」
黒田
「至急一部前線に配備しますが、立花の指揮下に入って貰います軍事行動は規律が大事ですから」
斎藤
「そんな事ゆーて戦わせんつもりじゃなかろーな?」
黒田
「いやー少数精鋭での制圧の主軸を担って頂きます。
生きて帰って来ないかも知れませんよ?」
斎藤
「うはは、うちの奴等にそれは無い、存分に首をあげよるわ」
竹中
「しかし地下にはもうめぼしい兵器は無いと思うが?」
黒田
「いや、保存されてる鳩を培養して欲しくって、伝書鳩にしようと思うんです」
榊原
「じゃあ鳩の足に着けるやつがいるな」
竹中
「具体的な作戦は立花小佐にまかせるのかね?」
黒田
「まあその点では私より優秀ですし、我々は彼に東名制圧までの軍事行動権を与え、物質だけ輸送すれば良いと思います」
竹中
「まあお手並み拝見といったところだな、ところで我々が送った彼は元気かね?」
黒田
「織田二等兵ですね?もはや監視の必要は無いと思いますが?」
斎藤
「お前が幹部全員たらしこんどるからか?
そーはいかんて、火龍が暴走したら箱根の全軍で止めたるわ」
黒田
「何の事だか分かりませんね」
竹中
「採決にかかる、二人共黙れ」
黒田はニヤリと周りを見渡し笑い、斎藤は久しぶりの大きな戦争に熱くなっていた。
この主導権争奪戦に当然参加すると思われた黒田はこれを静観する。
彼はこの間に現在行われている火龍による北方遠征作戦に必要な人員の割りだしと確保を行っていた。
未だに発電所には残存兵力が多数常駐し、援軍が来ている事を彼は知っていたのだ。
その為、ある程度の勝機を持って挑んだ他の幹部達は東名の猛反攻に合い奪還の失敗を繰り返し、黒田にお鉢が回って来た頃には既に火龍による進行準備を完了させていた。
この作戦から黒田は正式に北部遠征の指令官に任命され、表面化で本格的に動き出した。
水面下で彼は減っていくガソリンで勢力が小さくなっていく機動兵器部長に鉄道管理部のポストの確約と引き換えに、前回著しい活躍を見せた立花と佐竹を引き抜いた。
指令官の無能振りに士気を失っていた両名は奪還戦に勝機は無しと喜んで移動に応じる。
問題を起こし軍房に入れられていたチキンヘッズには恩赦を出し作戦当日までサウナ街を仕切らせた。
歩兵部長を連日接待し総殺傷数一位の凸凹トリオと歩兵部長の厄介払いでコックを獲得。
片倉と鍋島を鉄道管理部から抜擢し、町医者のドクターを軍事命令という力業で召集した。
宇佐美に関しては榊原が当所猛反対し自分が乗ると言い出したが、宇佐美が外に出て色々な機械もいじってみたいと榊原に何度も願い出て渋々了承した。
これは足しげく工場に火龍を見にきたと見せかけ、宇佐美に色々と吹き込んだのである。
黒田は立花に具体的な作戦考案書を提出させたが、黒田自身は戦術には疎く、結果として立花が前回に行った戦術と効果報告書を作らせた。
それに満足した黒田は立花に前線指揮を一任する事にした。
こうして結成された火龍隊は敵勢力の援軍部隊の撤退に合わせて出撃。
黒田の期待通り勝利したのであった。
実はこの防衛部隊の撤退を知らせたのは立花が救った茶屋というトレジャーハンターであった。
彼は誰よりも奥地に侵入し敵部隊の動向を観察、社長という犬を使い黒田に報告を行っていた。
その後西部へ偵察を命じられたが訳あって立花に救われる事になる。
佐竹の戦勝報告後、黒田はさらに動き出した。
民衆の支持を得る為に口売屋を抱き込むと東名討つべしの気運を高めさせ、軍幹部の懐柔に奔走した。
森は幹部の周辺をかぎまわりながら徹底的に粗を探し、黒田はそれを匂わせながら過半数の支持を確定させていった。
ここまで箱根は圧倒的軍事力を持って周囲のポリスを制圧していったが、北部は東名意外の大きな戦力があった為、保守的な考えをする幹部が大半であったのだ。
黒田が主戦方針であると気づいた他の幹部は森を引き抜こうと説得を試みたが「黒田さん意外に虎を飼い慣らせますか?」と一蹴した。
彼等は逆に黒田のブラックリストに載ってしまい徹底的に裏で叩かれ彼らはそれ以降沈黙を決め込んだ。
万全の体制を整えた黒田は発電所奪還戦の軍事報告会議に望んだ。
黒田
「以上が戦果報告であります」
斎藤
「じゃあ何か?
その小僧は自分で貴重な装甲列車を撃ったんか?」
予想通り黒田と相性の悪い斎藤大佐が食って掛かった。
黒田
「ええ、そうですよ」
斎藤
「そうですよじゃなかろうが!軍罰もんじゃろーが」
黒田
「では盗賊団に潰された車両数と戦死者名簿を読み上げましょーか?」
榊原
「間違いねー車両一台なら安いもんだ。
俺はむしろ誉めてやるべきだと思うがね」
斎藤
「じゃ何か?東名潰す為に箱根にも砲弾撃ち込むのを黙認しろっちゅーのか」
竹中
「それは極論過ぎるんではないかね?」
熱くなった斎藤を竹中大将が制した。
竹中
「この件はもういい、少人数で早急に勝ってくれたお陰で兵糧が減らずに済んだ。
民衆が英雄視しとるのに軍罰を断行すれば暴動が起きるぞ。
それよりも本日は黒田君から進言がある、大佐」
階級を重んじる斎藤はふてくされて黙った。
黒田
「あー本日は東名本部の制圧を目的とした侵攻作戦の進言をいたします」
この事を殆どの者が知っていた。
聞き耳を立てる事に長けていなければ幹部には到底なれないからである。
逆に腕一本でのしあがった榊原は初めてこれを聞き佐竹が焦って出発した理由に合点し椅子に深く腰を掛け直した。
逆に斎藤は身を乗り出して聞き入った。
竹中
「しかしな黒田、現在に我が軍の戦力では少々難しいのではないのかね?」
守衛方針の幹部から会議前に竹中への抗議があったようだった。
黒田
「主戦力は火龍一本です、皆さんにはバックアップをお願いしたいんです。
ここでやらなければ民衆の意に反しますし、北の資源を確保する為にも必要であります。
あと北のポリスからの通信が途絶えた理由も早急に確認しなくてはなりませんし」
竹中
「ああ、東名がいるから偵察も送れんし、トレジャーハンターも北からは来ない情報規制を敷かれているのは明らかだしな」
黒田
「一番の問題はそこなんです。
とにかく北の動きを把握しなければ我々がこの世界から取り残されるのは明らかです」
外部情報部長
「しかし油に火注ぐ形になったらどうするんですか?
我々は今まで鎖国状態を保ちここまで大きくなったんですよ?
北の勢力は未だに未知数ではないですか?」
斎藤
「お前ら外部情報部がまともな情報を持ってこんから、苦労しとるんじゃろが!
戦争反対なら子供でも言えるわ!
腰抜けはすっこんどれ!」
斎藤の一括に他の反対派の幹部は口を出すタイミングを失った。
黒田
「例外的に斎藤大佐の部隊のお力添えも少々頂きたいんですが?」
斎藤
「あほか!当たり前じゃ!お前ばっかりに旨い思いさせるか!」
竹中
「では取り敢えず作戦内容の確認を」
黒田は当分の間は火龍をもって前線を押し込み、変電所の守備兵の大部分を発電所まで移動させる事とした。
火龍の進撃に合わせ順次守備兵を北進させ防衛線を拡大。
攻略と平行し東名本部を攻略する部隊を箱根に集結させ、機会を待ち一気に前線に箱根から集めた部隊を送るという手筈を伝えた。
各部署からは砲弾の徴収と、また地下シェルターの遺産の使用許可を求めた。
斎藤
「おいっ俺の部隊は?」
黒田
「至急一部前線に配備しますが、立花の指揮下に入って貰います軍事行動は規律が大事ですから」
斎藤
「そんな事ゆーて戦わせんつもりじゃなかろーな?」
黒田
「いやー少数精鋭での制圧の主軸を担って頂きます。
生きて帰って来ないかも知れませんよ?」
斎藤
「うはは、うちの奴等にそれは無い、存分に首をあげよるわ」
竹中
「しかし地下にはもうめぼしい兵器は無いと思うが?」
黒田
「いや、保存されてる鳩を培養して欲しくって、伝書鳩にしようと思うんです」
榊原
「じゃあ鳩の足に着けるやつがいるな」
竹中
「具体的な作戦は立花小佐にまかせるのかね?」
黒田
「まあその点では私より優秀ですし、我々は彼に東名制圧までの軍事行動権を与え、物質だけ輸送すれば良いと思います」
竹中
「まあお手並み拝見といったところだな、ところで我々が送った彼は元気かね?」
黒田
「織田二等兵ですね?もはや監視の必要は無いと思いますが?」
斎藤
「お前が幹部全員たらしこんどるからか?
そーはいかんて、火龍が暴走したら箱根の全軍で止めたるわ」
黒田
「何の事だか分かりませんね」
竹中
「採決にかかる、二人共黙れ」
黒田はニヤリと周りを見渡し笑い、斎藤は久しぶりの大きな戦争に熱くなっていた。