咆哮するは鋼鉄の火龍
 黒田の力は既に統合されたポリスの主要部を支配するだけには留まらなかった。

 箱根勢力以下全てのポリスから今回の作戦への期待がいやが上にも高まっていた為、民間からも多くの協力者が出てきたのだ。

 皆が勝ち馬に乗ろうとしていたのを釈然としない者も多かったがこれも黒田の計算通りだった。

 自ら協力的だった企業には厚遇で迎え、逆に軍令を出しても手を貸さなかった企業には冷遇をもって報復した。

 恐らくこれで勝利すれば民軍全てで黒田は大きな影響力手に入れる事が出来るのだ。

 発電所の守備を担う先発隊が箱根の本部から送られ、榊原は火龍の一部の修理を全力で行っていた。

 昼夜問わず行われる修理作業で2日目から脱落者が多くの出始めた。

 特に砲弾課の人間は榊原の圧力をかけられ働き続け、3日後の朝には全員入院に追い込まれる程悲惨な状況であった。

 しかも要請通りの段数をまかなったが「万が一不良品が混ざっていたらどうなるか分かっているか?」

 と軍事病院に乗り込んだ榊原に脅され、全員泣きながら工場へと連れ戻されていった。
 
 森はその集められていく兵力のリストアップと輸送調整で疲労しきっていたが、黒田が若い時代も同じ様にやっていたと聞かされ奮起した。

 後で分かったが黒田は自分の私兵を使って作業を分担して行っていた事が分かり森は崩れ落ちる。

 斎藤は自分が担当するポリスに帰り、戦闘準備に取りかかる。

 彼は自分の権限で動かせる兵を全てかき集め箱根に戻ると直ぐに鬼のような最終調整訓練を行い、彼の部隊は天を突く程にまで士気が高まっていた。

 黒田は地方ポリスに上級士官を派兵し志願兵を募ると同時に使えそうな軍事物質を回収させた。

 彼は戦争準備に乗じて自分の私兵と兵器を引きずり出し、ばれない様に軍事鉄道部の傘下にに混ぜ、特に隠密行動が得意なトレジャーハンターを北に送った。

 更に北部意外の三方にトレジャーハンターのキャラバン隊を送り、反乱や陽動等の諸問題を監視させる。
 
 箱根には日々兵士と物質が集まりどんどん膨れ上がっていった。

 入りきらない兵器と兵士が野営を初め出した頃、箱根本部のビルでは黒田が竹中大将に暇な時に部屋に来るように呼び出された。

 黒田が入るとそこでは竹中がビルの上層階から箱根を見下ろしていた。

竹中
「ここ数日でこれ程のものを動かすとはな」

黒田
「私一人の力では無いですよ、箱根の底力でしょう」

竹中
「謙遜するな」

黒田
「ご用件は?」

竹中
「すまんな忙しいのに、なに、お前の真意を聞こうと思ってな」

黒田
「私はただ単に職務を…」
 
 竹中の鋭い眼光で黒田を見た。

黒田
「私はただ人類を本気で救おうと思っている少年の心を持った頭の良い中年です。

 本当ですよ?」

竹中
「以前からそれは知ってるよ、お前はやる気が無さそうに見えても実は誰よりも熱い事をな」

黒田
「じゃあ何です?」

竹中
「何故あそこまで立花を信用し、英雄に仕立てあげる?
 
 失敗すれば奴はここには戻って来れんぞ?
 
 勝てば望んでいなくともあいつは人望を集める。
 
 次は権力を集める。
 
 この戦争に勝っても貴様と二極化して箱根が内部崩壊する可能性があるのに何故だ?」

黒田
「そうならないから立花を選んだんですがね。
 
 奴が上に立つなら私は喜んで引っ張りあげますよ」

竹中
「だから何故そこまでするのかと聞いているんだ」

黒田
「あいつ…実は私の隠し子でして」

竹中
「は?」

黒田
「私の息子だと狙われるでしょう?
 
 私も弱点は要りませんし。
 
 だからあえて父親は私だって本人にさえ教えてないんですよ。
 
 母親は既に他界しましたし。」

竹中
「その事を他の者は?」

黒田
「貴方が言えっていったんですよ?
 
 だから誰にも言ってませんよ。

 内緒にしてくださいね」
 
 竹中は立花の頭の良さは父親譲りだったのかと納得していた。

黒田
「俺の息子だ。必ずやってのけるでしょう」

竹中
「ふふふ、これを聞いたら皆が何と言うか、千尋の谷に突き落とすか?」

黒田
「多少は援護しますよ。
 
 勝ったらみんな認めるでしょう?」

竹中
「嫌な父親を持ったもんだ」

 この黒田の重大な秘密の開示で黒田と竹中の仲はより一層強くなった。


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