咆哮するは鋼鉄の火龍
 竹中は戦車に乗り込み、無線機を使い全軍に指示を出していた。

 竹中の戦車は主砲が二問装備された旧世界で最新鋭の戦車であった。

 彼は前線でも戦えたが、用兵も妙技であった。

 戦車の周りには護衛兵が取り巻き、天体望遠鏡で戦場を観察していた。

竹中
「妙だな、いくら飛べんとしても火龍に対しての防備が薄すぎる。

 火龍、聞こえるか?」

通信(立花)
「こちら立花、どうぞ」

竹中
「線路上の防衛線が薄い、罠かもしれん気を付けろ。

 何とか上部からの砲撃を避け下部の部隊に突っ込め、そうすれば上から砲撃は無くなるはずだ」

通信(立花)
「了解、下層の防衛網中央まで全速力進みます」

 火龍はスピードを上げ敵陣に突っ込んで行った。

 東名の町の上からは高低差を利用し長距離砲撃が始まった。

 砲撃の中、火龍は鷹揚から乗せ替え先頭に着けた巨砲をもって敵のバリケードを吹き飛ばし進み続けた。

 装甲列車の勇敢な進撃に勇気付けられ、続いて鷹揚は垂直な裏面を敵に向けバックの形で進み、それを盾に歩兵達が後ろに付き戦場へと進んでいった。
 
 斎藤は鷹揚最上部の吹きさらしに陣取り苛立っていた。

斎藤
「なんちゅー遅い艦じゃ、また小僧に先を越されとるじゃないか」

本多
「ここは砲弾飛んで来るから下に戻りませんか?」

斎藤
「小僧が勇敢にも突っ込んどるのに何をいっとるか!」

本多
「吹き飛びますよ?」

斎藤
「グダグダいうな!

 おいそろそろ撃て、本田お前も手伝え」
 
 鷹揚最上部には中級キャノン砲が設置され前方の敵に向けて発射された。

 さらに歩兵部の先遣課が集められ、敵の砲撃に怯えながら狙撃を繰り返しす。

 幸いにも鷹揚の足を止めようと駆動部周りが弱点である移動要塞下部に砲撃が集中した為最上部は無傷で進み続けた。

 それを読んでいた立花は榊原に頼み、下部の装甲を厚くしてもらっていたのだ。

 更に今回は火龍よりも鷹揚が脅威であると判断した東名側は火龍に砲撃を集中させなかった為、火龍は敵の第一陣を容易に突破し、第二陣に迫った。

立花
「達磨爆弾二名投下」

 立花の合図で朱達磨が二人走る列車から飛び出し転がった。

 のっそりと起き上がると敵の砲台に一目散に走り突撃していった。

立花
「巨人砲発射」

 銃弾の雨の中、島津が火龍最前方の大砲を放ち前方の土嚢を吹き飛ばした。

立花
「さらに二名投下」

 次に飛び降りた朱達磨の二人はトーチカの外から銃眼に機関銃を突っ込み乱射した。

 銃撃を受けながらも機銃、副砲、主砲に朱達磨と全ての兵器を活用して火龍は敵の防衛施設を破壊出来るだけ潰して暴れ回った。

 東名軍は再度火龍の脅威を目の当たりにし、直ぐ足元で荒れ狂う火龍にも砲撃を開始した。

 鷹揚からそれを見ていた斎藤は驚いていた。

斎藤
「あの小僧!

 俺の精鋭を鉄砲玉の様に扱いおってからにー…天晴れ!」

本多
「苦労してますね」

 後ろに控えた朱達磨が頷いた。


立花
「そろそろ敵の防衛網密集地形に入る、機関速度を落とせ」

 下の防衛拠点に被害が及ぶ為に上からの砲撃が無いと考えた立花であったが、砲撃が止む事はなかった。

通信(リトル)
「電源車被弾!甲板に亀裂」

通信(十河)
「主砲砲身に被弾、退避します」

立花
「どうなってる味方事殺すつもりか?

 くそ、全速前進!

 高架近くまで前進し死角逃げ込むぞ」

 東名の上層からは敵味方に関係無く射撃が行われ次々に人が散っていった。

 異変を察知していた竹中は怒りに震えていた。

通信(立花)
「本部聞こえますか?本部応答せよ!」

竹中
「こちら竹中」

通信(立花)
「悲鳴が聞こえます。女性や子供の鳴き声も!」

竹中
「ああ、今見えた。

 軍人に似せた民間人だな。

 上の砲撃で脅して無理矢理戦わせておるんだろう」

通信(立花)
「退避命令を、お願いします、退却させて下さい!」

竹中
「全軍、地表にいるのは民間人だ交戦を避けよ!

 斎藤!上にいる者に容赦無用、殺しまくれ!

 立花!今すぐ地表の人間に拡声器で退避勧告を、その後でこちらに引け」

箱根偵察兵
「鷹揚敵上層施設に接近」

 斎藤は防弾スーツを着用し、背中に薬莢箱を背負い、両手に小型のガトリング銃を二丁持って堂々と構えた。

佐藤
「黒田は民間人を使ったが強制もせず殺さなかったぞ!

 貴様ら猿真似外道は全員地面に叩き落としてくれるわ!」

 斎藤の射撃と同時に鷹揚上部全員が一斉に火を吹き上陸地点の敵を血と肉へと変えた。


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