咆哮するは鋼鉄の火龍
 火龍の襲撃を恐れ、上層に逃げ込んだ東名兵は一般人を地上に下ろし上空の砲座で脅し無理矢理戦わせていた。

 民衆の暴動鎮圧に躍起になって疲れきっていた東名兵士は、箱根の部隊の勢いを終始止められず、雪崩れ込んだ箱根兵によって防衛拠点を制圧され、投降を繰り返した。

 死体の散乱する中を鷹揚から登って来た竹中はずんずんと戦地を進み、竹中を見た部隊は虐殺を止め歓声を送った。

竹中
「今は殺すな、きゃつらは後でゴブリンの餌にしてくれる」
 
護衛兵
「この先です」
 
 東名の中でも一際大きく建てられた建造物があった。
 
 門の前には朱達磨が警備を行っていた。

朱達磨兵士
「敵の司令官を捉えました。制圧は完了しております」

竹中
「ご苦労」
 
 竹中が案内された先に『東名高速道路監理局長室』と書かれたプレートの張られた扉があった。

朱達磨兵士
「こちらです、斎藤大佐、竹中大将が参られました」

 扉には大きくな銃弾で穴が空けられ、そこから本多が扉を開けるのが見えた。

斎藤
「やりましたな!竹中大将」
 
 竹中が見渡すと、机の前に膝を着かされた男が二人竹中を見ていた。
 
 一人は手首から先を失い血を流していた。

竹中
「どちらが指令官だ?」
 
 手首の揃っている男が答えた。

「私が局長だ」

竹中
「民間人を戦わせる卑劣漢の割には逃げださなかったのか?」

局長
「脱出用のヘリはそいつに落とされたんでな」
 
 男は本多を見た。

竹中
「何故発電所を襲った?

 交易も出来ただろうに」

局長
「東京での戦いに参加してない奴らに言われたくはない、戦った我々に搾取されるのは当然だろ?」

竹中
「生憎通信機器が壊れていたんでな、今でも戦っているのか?」

局長
「通信機器が壊れただ?

 そんな話を信じると思うか?
 
 もう共同戦線は崩壊している、皆自分の都市を守る事で必死になってるのさ」

竹中
「『自分の都市』か、独裁者が言いそうだな、何故お前等は民間人を盾にした?」

局長
「下手に正義感ぶるのは止めろ、我々は他の都市と連携して戦った連盟軍だぞ?

 お前等が使った移動要塞も他の都市からの援助兵器だ。

 我々が正義なんだ!

 貴様等は戦いに参加すらしなかった賊軍だ!」

竹中
「そうか、正義を語るか、貴様はこの男の知っている事は全て知っているか?」

 竹中は負傷した副官の男に向かって言った。

傷をおった男
「そう思います」

竹中
「では、お前はいらんな、お前の正義の力で私の剣を止めてみよ」

 竹中はサーベル形の軍刀をぬらりと抜き構えた。

局長
「待て、悪かった。権利は全て渡す」

竹中
「我ら賊軍はただ奪うのみだ」
 
 竹中の抜いた軍刀が管理局長の喉を貫き、引き抜くと鮮血がカーペットに広がった。

 局長は口をパクパクさせ倒れた。

斎藤
「お見事!」

  斎藤は拍手した。

竹中
「こいつの手首を止血しろ、捉えた兵士は後で使う、まあどの道死んで貰うがな」

斎藤
「了解しました。
 
 小僧の部隊はどんなもんです?」

竹中
「退却しているはずだ。
 
 民間人の救出と保護も急げよ、お前は立花の部隊だな?」

本多
「はっ」

竹中
「火龍はソーラーパネルを積んでから榊原を拾い箱根に先に戻って戦後処理に文官を寄越さしてくれ、温泉で存分に休むといいと伝えてくれるか。
 
 私が帰ったら恩賞を出す。

 楽しみに待っていろともな」

本多
「ありがとうございます」

斎藤
「お前うちの部隊に入らんか?」

本多
「申し訳ありません、立花少佐に恩がありますので、では失礼します」

斎藤
「小僧には過ぎたる男だ。

 しかし黒田にばかり人材が集まりよるわ」

竹中
「立花にではないのか?

 さっきお前が立花の心配をするとは意外だったな」

斎藤
「そういえば確かに、しかしここには地下シェルターが無いそうですよ?

 ハズレですな」

竹中
「猫ババする気だったな?」

斎藤
「人が集まらないんだから物位構わんでしょ?」

竹中
「何故人が集まらんか自分の胸に聞いたらどうだ?」

 未だに東名では局地的に戦闘が起こっていたが、次々に箱根の旗が立てられ、投降を促す勧告が始まり、勝利は決定的なものとなった。

 ここに開戦当初から二年に及んだ一つの小さな戦争が終結した。

 東名の民間人は箱根軍を解放軍として迎え入れたが、火龍だけは東名の軍民両方から恐れられる結果となったのである。
 

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