咆哮するは鋼鉄の火龍
火龍はかなり多く被弾し、乗組員達も疲れ果てていたが、本多の知らせに皆が喜び、東名の近くに並べられたソーラーパネルの回収へと向かった。
東名まで来ていた箱根の連絡列車と共同で機材を積み込み、箱根に帰る途中で榊原の一団を拾い一路箱根へと向かう。
榊原
「どうした?湿気た面しやがって、勝ったんだろう?
えらく元気ねーな」
佐竹
「実は、我々が特攻した先には民間人が多数いまして」
榊原
「…成る程ね、ほんで今さら戦争の醜さに気づいたって所か」
佐竹
「兵隊も民間人も同じ人間なのに代わりはないんですけど、どーもみんな腑に落ちなくて」
榊原
「今まで軍人しか相手にしてなかったからな、相当堪えてるみたいだな」
佐竹
「我々だって制圧した発電所で救出した民間人意外初めて東名の家族を見ましたし、ましてや知らずとはいえ大分と…殺してしまいましたし」
榊原
「戦争やってんだ。
いつまでも正義の戦士じゃいられんさ。
俺だっていい年こいて未だに悩むさ、懸命に作った兵器が多くの命を奪っちまってるんだってな」
佐竹
「榊原さんがですか?」
榊原
「悪りーのかよ」
佐竹
「いや別に、ただ意外だと思いまして」
榊原
「でもよ、他の奴におんなじ嫌な思いはさせたくねーだろ?」
佐竹
「割りきるにはもう少し時間が要りそうです」
東名での戦闘中、回線から聞こえる立花の動揺した命令は皆に聞こえていた。
立花は口数が少なくなり、佐竹に大方の指示を任せていた。
箱根に着くまでの間に心配したみんなが機会を見つけては立花の元によっては慰めたのだった。
榊原
「気にするなお前がやったんじゃない、俺の作った兵器がやったと思えばいいさ」
宇佐美
「少佐、出来る事があったら何でも…何でも言ってください」
ノッポ
「自分が警戒車にいながら、しっかり見ていなかったせいです。
自分の責任です」
ファット
「民間人だけじゃなく普通に兵士も混ざっていたからしょうがないですよ」
リトル
「仕方ないことですよ、戦場では、味方を誤爆するよりはマシです」
コック
「今日は少佐の好きなもの作りますから元気出して下さい。
何が良いですか?」
鍋島
「…少佐は悪くありませんよ」
片倉
「湿っぽいのはやめましょーよ。
せっかくの凱旋なんすから」
ドクター
「わしも手術中に患者ををやってしまった時は悩んだよ。
だがいつか立ち直らなければならんのだ」
すすじい
「まだ若いすから、そら色々ありまっす。
これからっすよ」
織田
「あの状況下では仕方ないと思います」
十河
「大将元気出してくれよ、俺なんて主砲失ったんだぜ」
本多
「私なんてもう何人殺めたか分かりませんよ、殺さなければ殺される。
悲しいですが、軍人の責務ですね」
みんなの優しさに心は打たれたが、それでも立花の耳からあの時の悲鳴が消える事はなかった。
佐竹
「みんな心配してますよ」
立花
「…赤松は来てない」
佐竹
「『よっしゃ俺もいっちょ』て言ったから、みんなで止めたんですよ」
立花
「…ふふ、ははは。
いつにはいつも救われるな」
佐竹
「お?やっと笑いましたね、しかしいつもですか?」
立花
「ああ、こんな戦場にいて、いつも明るく懸命に生きてるでしょ?」
佐竹
「まあ良く言えば、本当は何も考えて無いだけですが」
立花
「いつも悩んでいました。
作戦は上手くいくだろうか?
皆生きて帰れるだろうかって、そんな時いつもあいつ面倒を起こすでしょ?
悩む暇も奪ってくれるんですよ」
佐竹
「確かに、退屈はしないですね」
立花
「色々考えたけど決めたよ佐竹さん」
佐竹
「何をです?」
立花
「嘘ばっかりのこの統括本部を本物にしてみせる」
佐竹
「本物に?」
立花
「もう銃声は聞きあきた。
けど誰かがやらなくちゃいけない。
人類を統括して争い事を無します。
罪滅ぼしにはならないけど被害の拡大は抑えられますよね?」
佐竹
「いくら箱根がでかくても統一は難しいですよ?
旧世界の地図見たら分かるじゃないですか。
まあ他にやる事もないし俺も付き合いますよ」
立花
「よしっ多くを殺したからその倍以上の人間を救ってみせる」
佐竹
「上が何て言うか、いっその事箱根から独立しますか?」
立花
「それもいいですね!」
通信(ノッポ)
「そろそろ箱根が見えます」
佐竹と話していた立花は箱根の直前で全車両に通信を行った。
立花
「各員に告ぐ、
心配をかけてすまなかった。
指揮官でもあるにも関わらず
迷いを生じてしまった。
全ては私の責任である。
皆は胸を張って欲しい、
それだけの事をやったのだから
皆の言葉で救われた。
ありがとう。
…本当にありがとう。
私は残りの人生を人類の復興の為に戦う。
また共に戦う事になったら、
こんな私ではあるが、
またついて来てくれるなら、
その時はまた支えて欲しい。
帰ろう箱根に 凱旋だ」
乗組員が一斉に指揮車に集まってきて立花について行くと訴えた。
いつもの立花に戻った事を皆が喜んでいた。
十河が抱き締めたのをかわきりに皆が抱きしめにかかった。
赤松
「ありゃ?榊原のおやっさん泣いてんすか」
榊原
「うるせー」
赤松は殴られみんなは笑った。
立花
「赤松もありがとう」
赤松
「へへへ」
汽笛に応えて箱根に灯りが灯り、温泉の湯気が温かく火龍を包んだ。
民衆が歓喜して勇者達を出迎る声が聞こえる。
『墓標の盗賊団討伐戦』
『発電所奪還戦』
『キャノンキャニオン攻略戦』
『移動要塞奪取戦』
『東名最終防衛線戦』
『東名本部制圧戦』
多くの困難を乗り越え、誰1人戦死する事無く帰ってこられたのだ。
この一連の戦いと業績を人々は後に『火龍の奇跡』と呼び称える。
乗組員の皆は例え新しく何かが始まっても、苦労を分かちあったこの仲間と共にいたいと思った。
戦場で死ぬのなら、横には心許す友がいて欲しいと願った。
しかし立花は皆に揉まれながら、彼らとの別れを心の底で決意していたのだった。
火龍は傷だらけの体を誇らしく見せながら古巣へと羽を休めに戻ったのである。
同様に傷ついた龍騎兵達も束の間の安寧を求め龍の背から降りたのであった。
東名まで来ていた箱根の連絡列車と共同で機材を積み込み、箱根に帰る途中で榊原の一団を拾い一路箱根へと向かう。
榊原
「どうした?湿気た面しやがって、勝ったんだろう?
えらく元気ねーな」
佐竹
「実は、我々が特攻した先には民間人が多数いまして」
榊原
「…成る程ね、ほんで今さら戦争の醜さに気づいたって所か」
佐竹
「兵隊も民間人も同じ人間なのに代わりはないんですけど、どーもみんな腑に落ちなくて」
榊原
「今まで軍人しか相手にしてなかったからな、相当堪えてるみたいだな」
佐竹
「我々だって制圧した発電所で救出した民間人意外初めて東名の家族を見ましたし、ましてや知らずとはいえ大分と…殺してしまいましたし」
榊原
「戦争やってんだ。
いつまでも正義の戦士じゃいられんさ。
俺だっていい年こいて未だに悩むさ、懸命に作った兵器が多くの命を奪っちまってるんだってな」
佐竹
「榊原さんがですか?」
榊原
「悪りーのかよ」
佐竹
「いや別に、ただ意外だと思いまして」
榊原
「でもよ、他の奴におんなじ嫌な思いはさせたくねーだろ?」
佐竹
「割りきるにはもう少し時間が要りそうです」
東名での戦闘中、回線から聞こえる立花の動揺した命令は皆に聞こえていた。
立花は口数が少なくなり、佐竹に大方の指示を任せていた。
箱根に着くまでの間に心配したみんなが機会を見つけては立花の元によっては慰めたのだった。
榊原
「気にするなお前がやったんじゃない、俺の作った兵器がやったと思えばいいさ」
宇佐美
「少佐、出来る事があったら何でも…何でも言ってください」
ノッポ
「自分が警戒車にいながら、しっかり見ていなかったせいです。
自分の責任です」
ファット
「民間人だけじゃなく普通に兵士も混ざっていたからしょうがないですよ」
リトル
「仕方ないことですよ、戦場では、味方を誤爆するよりはマシです」
コック
「今日は少佐の好きなもの作りますから元気出して下さい。
何が良いですか?」
鍋島
「…少佐は悪くありませんよ」
片倉
「湿っぽいのはやめましょーよ。
せっかくの凱旋なんすから」
ドクター
「わしも手術中に患者ををやってしまった時は悩んだよ。
だがいつか立ち直らなければならんのだ」
すすじい
「まだ若いすから、そら色々ありまっす。
これからっすよ」
織田
「あの状況下では仕方ないと思います」
十河
「大将元気出してくれよ、俺なんて主砲失ったんだぜ」
本多
「私なんてもう何人殺めたか分かりませんよ、殺さなければ殺される。
悲しいですが、軍人の責務ですね」
みんなの優しさに心は打たれたが、それでも立花の耳からあの時の悲鳴が消える事はなかった。
佐竹
「みんな心配してますよ」
立花
「…赤松は来てない」
佐竹
「『よっしゃ俺もいっちょ』て言ったから、みんなで止めたんですよ」
立花
「…ふふ、ははは。
いつにはいつも救われるな」
佐竹
「お?やっと笑いましたね、しかしいつもですか?」
立花
「ああ、こんな戦場にいて、いつも明るく懸命に生きてるでしょ?」
佐竹
「まあ良く言えば、本当は何も考えて無いだけですが」
立花
「いつも悩んでいました。
作戦は上手くいくだろうか?
皆生きて帰れるだろうかって、そんな時いつもあいつ面倒を起こすでしょ?
悩む暇も奪ってくれるんですよ」
佐竹
「確かに、退屈はしないですね」
立花
「色々考えたけど決めたよ佐竹さん」
佐竹
「何をです?」
立花
「嘘ばっかりのこの統括本部を本物にしてみせる」
佐竹
「本物に?」
立花
「もう銃声は聞きあきた。
けど誰かがやらなくちゃいけない。
人類を統括して争い事を無します。
罪滅ぼしにはならないけど被害の拡大は抑えられますよね?」
佐竹
「いくら箱根がでかくても統一は難しいですよ?
旧世界の地図見たら分かるじゃないですか。
まあ他にやる事もないし俺も付き合いますよ」
立花
「よしっ多くを殺したからその倍以上の人間を救ってみせる」
佐竹
「上が何て言うか、いっその事箱根から独立しますか?」
立花
「それもいいですね!」
通信(ノッポ)
「そろそろ箱根が見えます」
佐竹と話していた立花は箱根の直前で全車両に通信を行った。
立花
「各員に告ぐ、
心配をかけてすまなかった。
指揮官でもあるにも関わらず
迷いを生じてしまった。
全ては私の責任である。
皆は胸を張って欲しい、
それだけの事をやったのだから
皆の言葉で救われた。
ありがとう。
…本当にありがとう。
私は残りの人生を人類の復興の為に戦う。
また共に戦う事になったら、
こんな私ではあるが、
またついて来てくれるなら、
その時はまた支えて欲しい。
帰ろう箱根に 凱旋だ」
乗組員が一斉に指揮車に集まってきて立花について行くと訴えた。
いつもの立花に戻った事を皆が喜んでいた。
十河が抱き締めたのをかわきりに皆が抱きしめにかかった。
赤松
「ありゃ?榊原のおやっさん泣いてんすか」
榊原
「うるせー」
赤松は殴られみんなは笑った。
立花
「赤松もありがとう」
赤松
「へへへ」
汽笛に応えて箱根に灯りが灯り、温泉の湯気が温かく火龍を包んだ。
民衆が歓喜して勇者達を出迎る声が聞こえる。
『墓標の盗賊団討伐戦』
『発電所奪還戦』
『キャノンキャニオン攻略戦』
『移動要塞奪取戦』
『東名最終防衛線戦』
『東名本部制圧戦』
多くの困難を乗り越え、誰1人戦死する事無く帰ってこられたのだ。
この一連の戦いと業績を人々は後に『火龍の奇跡』と呼び称える。
乗組員の皆は例え新しく何かが始まっても、苦労を分かちあったこの仲間と共にいたいと思った。
戦場で死ぬのなら、横には心許す友がいて欲しいと願った。
しかし立花は皆に揉まれながら、彼らとの別れを心の底で決意していたのだった。
火龍は傷だらけの体を誇らしく見せながら古巣へと羽を休めに戻ったのである。
同様に傷ついた龍騎兵達も束の間の安寧を求め龍の背から降りたのであった。