咆哮するは鋼鉄の火龍
 箱根の中心にある本部の一階ロビーで、立花が神妙な面持ちでソファーに座り何かを待っていた。

 声を掛けづらい雰囲気の立花を皆が憧れの目で遠くから見ていた。


「中佐!」

 森が急いで立花まで走ってきた。

立花
「すいません忙しい所」


「いやいや、いいんですよ、どうぞこちらへ」

 二人は黒田の待つ部屋に入ると上機嫌の黒田がいた。

立花
「失礼します」

黒田
「よおー英雄!」

立花
「お忙しい所申し訳ありません」

黒田
「いいよいいよ、かしこまらなくったって、座ってくれ」

立花
「いえ、このままで結構です、本日はお願いがありまして」

黒田
「どうしちゃったんだよ怖い顔して」
 
 立花は黙って懐から退軍届を出した。

立花
「勝手を言いますが箱根を出ようと思います」
 
 黒田も森もかなり焦った表情をした。

黒田
「まっ待て、どうした急に、中佐だぞ?

 気は確かか?」

立花
「本気です」
 
 黒田は立花の真剣な顔に圧倒されそうになった。

黒田
「理由は聞かせてもらえるんだろうーな」

立花
「東名より北の残存兵力と共にゴブリンと戦いたいからです」

黒田
「いや、俺だって東京目指すつもりだよ?

 別にやめなくてもいいだろ?」

立花
「今だに東名では防衛強化のみを行い、他のポリスと連絡をとっていないそうですね?

 対応が遅すぎませんか?

 私は軍のしがらみに囚われず真の平和の為に戦いたいんです。

 もう他ポリス制圧はやりたくありません」

黒田
「まてよ、みんな東名みたいなポリスだったらどうするんだよ、勝ち過ぎてのぼせたか?

 正義のヒーロー宗教でも開く気か?」

立花
「ポリスの都合で人を殺すのが嫌なんですよ、だから抜けます。

 ここで幹部になって行動するには時間が掛かりすぎますんで」

黒田
「ふー予想外だな、一人で世界を変える気か?

 どう思う森君?」


「ここを出ていったら今までの乗組員が敵になるかもしれませんし、無事に東名までたどり着けるかも分かりませんよ?」

立花
「脅しているつもりで?」
 
 立花の目付きを見た森は、昔の黒田に初めてあった時の恐怖を思い出した。


「いやっそういう意味ではなく」
 
 森は目を反らし下を見た。

黒田
「分かったよ、だがちょっと待て悪いようにはしないから、今回勝ったから幹部連中は次も侵略しようと考えるのが普通だろ?
 
 押さえるのに工作がいるんだよ」

立花
「一応、竹中大将からは外交賛成を頂いていましたがね」

黒田
「やれやれ、あのじーさんもやってくれるよ」

立花
「斉藤大佐からもです」

黒田
「あの斉藤大佐が?

 外交?

 意味分かって賛成してるのか?」

立花
「では作戦進めていいですか?」

黒田
「他には誰が賛成した?」

立花
「その二人にしか了承を得てません」

黒田
「本当は全て奪うつもりだったんだけど、一旦同盟組んでから何とか裏でトップに立って見せるさ」

立花
「それでもいいんです、余計な戦争が無くなれば」

黒田
「だがな立花、お前がどれだけ苦労して戦い抜いた所でだ。

 いつか荒れ地は蘇り、町が建ち、そこで暮らす者達が平和を語ってもだ。

 歴史を尊ばずに必ずまた世界は崩壊するぞ、お前はそのサイクルを早めているだけにすぎんのさ」

立花
「だからといって今避けられる戦いを無理に戦い、サイクルを遅らせる事に意味はありますか?」

黒田
「私腹が肥えるだろ?

 ははは、冗談だよ今夜一杯付き合え、真実を語りたい」
 
 了承した立花が部屋を出ると黒田はニヤリと笑い、森は少し悔しそうな顔をした。




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