咆哮するは鋼鉄の火龍
 本多がエアロバイクに乗り、目的地である要塞に向け走っていった。

 向こうからは平地にいるこちら側が全て見えているのであろう巨大な要塞壁が見えた。

 本多が壁の前を走ると歓喜の声が要塞から溢れ、離れた火龍まで聞こえる。

 本多の合図で火龍が進み、大きなゲートを通るとそこには『御嶽』と書かれたプレートが掛かっていた。

 中に入ると箱根に劣らず建物が乱立し、多くの人が歓迎に出てきていた。

 ドームの天井が開かれ、日の光が御嶽の街に差し込み、火龍の最後尾が街に入りきるとゲートが音を立て閉まっていった。

 奥まで進むと作業員らしき男が停止の合図を出し、火龍の乗組員が武器を持って下車した。

 本多と親しそうに話している眼帯をした男がこちらに気付き、本多に連れられ立花へと向かって歩いて来た。

本多
「予想通り生き残っていました。

 しかも優秀な連中が、紹介します。

 現在ここの指揮をされている伊達中将です」

伊達
「伊達と申します。

 立花殿お疲れの所申し訳ないが護国軍が向かっているとかで?」

立花
「こちらこそ救援が遅くなり申し訳ない。
 
 ここに向かう途中で襲撃を受けました。
 
 こちらに向かっているようです」

 伊達は部下に何やら指示を出した。

伊達
「直ぐに作戦会議を開きます。
 
 乗組員の方々は部下がご案内させますのでご休憩を、列車はドックに回させます。
 
 立花殿と副官の方々はこちらへ」

立花
「判断が早いですね」

伊達
「急かして申し訳ない」

立花
「いえ、佐竹、本多一緒に来てくれ」
 
 伊達に通された部屋では既に他の幹部らしき人間が揃っていた。
 
 誰もが鍛え上げられた強者の様相を呈していた。
 
 彼らは東京での戦闘後、退却戦を繰り返しながら他のポリスを吸収しつつ御嶽に退却したという。
 
 東京は予想以上のゴブリンの繁殖のせいで護国軍も被害を受け撤退したらしく今では無人と化しているそうだ。
 
 本拠地を失った護国軍は各地を転戦し、略奪を繰り返していたそうである。

伊達
「ここは東京よりかなり離れていた為に、今まで襲撃を免れていたが、遂に見つかったようだ」

立花
「我々の計測では敵は3日後にここまでやって来るでしょう」

伊達
「3日では援軍が間に合わんな、うちの偵察隊は何をやっていたんだ!」

立花
「援軍?では他にも人類の生き残りが?」

伊達
「ええ、知っているだけであと二ヶ所あります。しかし援軍は間に合わないでしょうな」

立花
「兵力と、戦闘要員数を確認させて頂きたいんですが」

伊達
「ええ、しかし一緒に戦って頂けるんですか?

 勝ち目は薄いですよ」

立花
「無論そのつもりです。

 その為に来ました。
 
 お互いに協力し何とか打開策を打ち出しましょう」

伊達
「本多の件も合わせ感謝致します」

 会議はその日1日中かかったが、御嶽にいる者達はさすがに歴戦の戦士で即断即決で話しは進んでいった。

 御嶽は銃弾が不足してはいるが難攻不落に相応しい防衛力を駆使し籠城戦を主戦方針とした。

 立花は要塞の戦力と施設から急遽作戦を考案した。

伊達
「その作戦では貴女方に被害が大きすぎるのでは?」

立花
「東京で戦えなかった分、存分に暴れて見せますよ。
 
 本多も東名との戦いで同じようにやってくれましたし」

伊達
「心強いですな、しかし東名がそこまで腐っていたとは…
 
 本多はこのままお預かり頂けますかな?
 
 本多もそれで良いな?」

本多
「立花殿がいなければ今日の私は存在しません」

立花
「そうして頂けると助かります。

 もう仲間だと思っておりますので」

伊達
「本多、良い上官に巡り会えたな。

 では早速作戦遂行に取り掛かる。
 
 立花殿の作戦を総動員で手伝え」
 
 厳つい男達が一斉に立ち上がり立花に感謝を込めた敬礼をし作業に向かっていった。

立花
「流石は正規兵だ。迫力も統率力もがちがうな」

本多
「自分は嬉しいです。

 彼らに再び会えた事も貴方に会えた事も。
 
 彼らは戦い出したらもっと凄いですよ」

佐竹
「負けてられんな、いっちょ見せてやりますか」
 
 立花達も作戦準備に取りかかる為に会議室を出た。
 
 火龍のメンバーはこれからあの大部隊と戦う事が分かっていたかのように立花を待っていた。
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