咆哮するは鋼鉄の火龍
 護国軍進行方向左から爆発と共に火龍が発進した。

 砂でカモフラージュし隠した元々あった車両倉庫のゲートを吹き飛ばし、特殊燃料で一気に加速した火龍は敵の一団の横腹を食い破った。

 正面ゲートまで迫っていた護国軍は三日前に襲撃した火龍の奇襲に混乱をきたし、火龍は全砲門を開き砲撃を繰り返しながら敵の軍を蹴散らし進んだ。

 歩兵を御嶽ゲート前に持ってきていた護国軍の砲台は予期せぬ襲撃に反撃の手が遅れる。

立花
「主砲!敵の本陣を狙え、副砲は敵重量兵器を、機銃は歩兵を撃ちまくれ!」

 猛烈な射撃を行いながら敵の中心に入り込み、御嵩の正面ゲートから前方陣取るよう火龍は急停止し、大打撃を敵に与える事に成功する。

立花
「地雷を作動させろ!」

 さらに火龍外壁に貼り付けられていた対人地雷が一斉に火を上げ、回りにいた兵を吹き飛ばした。

立花
「ジャズハンマー発車!」
 
 地雷に続いて火龍にとりつこうと迫った敵兵が広範囲でジャズハンマーによって倒れていく。

 防壁の上では伊達が必死に指令を繰り出していた。

伊達
「なんという戦ぶりだ!

 正に龍よ!

 砲撃手!火龍を援護しろ!

 彼等に当てるなよ!
 
 ゲートを死守しろ!」

 身をていして御嵩を守る形となった火龍は敵の最新鋭の兵器で襲撃されたが、奇襲で敵の火力を削げていたのと、御嵩の援護射撃で何とか耐えていた。

 御嶽側がこれ以上は耐えられないといった寸前所で起死回生の一撃が放たれた。

御嶽守備兵
「火龍の主砲砲撃が敵の本陣を直撃!」

伊達
「やるなっ!

 新参に負けられんぞ!

 私は下に降りる」
 
 御嶽の援護射撃が火龍の付近の兵器に命中を繰り返し、正面ゲートは混乱していた護国兵を押し戻し始める。

 撤退を始める護国兵と攻めてくる後続の兵により板挟みとなった火龍は全員総出で乱射に近い射撃を行った。

通信(ファット)
「最後方の火砲車被弾、撤退します。」

佐竹
「消火作業を急げ!

 踏み留まれるか?」

通信(ファット)
「やってみます」

通信(ドクター)
「宇佐美が被弾した」

立花
「宇佐美が?

 くそ!本多出撃しろ!

 敵の兵器を爆破しろ!

 主砲固まっている敵を叩け!

 ドクター、お願いします。

 宇佐美を助けてください!」

通信(ドクター)
「わかった。直ぐに向かう」

 本多は朱達磨を率いて出撃し、強引に敵の砲台と戦車を乗っ取っていった。

 その時猛烈なスピードで南方から簡易装甲列車が汽笛を鳴らし向かってきた。

通信(十河)
「殺戮狸親父が来たぞ!」

 援軍要請を受けた斎藤が南方から駆けつけに来たのだった。

斎藤
「殺っとる殺っとる!

 行くぞ!

 作戦はただ一つ肉弾特攻!」

 列車から朱達磨を先頭に500程の兵が飛び降り突撃してきた。

伊達
「俺に続け、我々も突撃するぞ!」

 戦場はこれを機に一気に乱戦になり、本陣を失った護国軍は混乱の極みに達し、逃げ出すものが多く出た。

立花
「どうしたんだ?

 それだけの装備ならまだ戦えるだろう?

 何を焦ってる」

佐竹
「斎藤大佐からの伝令兵です」

伝令兵
「援軍に来る途中でゴブリンの大軍を確認、至急防衛体制を取れとの事です」

立花
「護国軍は追われていたのか!

 佐竹直ぐに緊急信号を出せ!」

 箱根、御嶽軍が緊急信号に気づき火龍に集まって来た。

斎藤
「中々の勝ちっぷりだな!」

立花
「ゴブリンがここに?」

斎藤
「見た事ない大軍でな、こんな事なら初めからお前に付いていったら良かったわい」

伊達
「全員に撤退を急がせる」

立花
「火龍を動かせ!格納庫に入れるぞ、急げ!」

伊達
「しまうのか?」

立花
「弾薬は節約したいんです。

 ゲートの復旧を」

伊達
「了解した」

立花
「ドクター!宇佐美は?」


通信(ドクター)
「うるさい!今処置しとる!」

立花
「くそっ!」

 護国軍は完全撤退し変わりに地を埋める黒い群衆がそこまで迫っていた。

 立花は迫り来る敵に焦るより宇佐美が負傷し、初めて怒りの頂点まで燃えているのを感じた。



 
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