咆哮するは鋼鉄の火龍
 御嶽の正面ゲートから中央通路は線路が敷かれていた為、直線上に障害が無く、次々にゴブリンがそのメインストリートに溢れて出た。

 それを真正面で待ち構えていたのは立花であった。

立花
「撃てー!」

 立花の号令で御嶽の内側から正面ゲートに向け防壁の上に備え付けられていた砲台が移動させられていた。

 正面ゲートを狙う用に地下シェルター入り口を守る形で設置された砲台が発射される。

 その弾道はゴブリンを巻き込みながら正面バリケードを吹き飛ばした。

 ゲートを越えメインストリートに乗り込んでいたゴブリン達はまとめて吹き飛び、生き残った者は横路に逃げようとしたが、待ち受けていた連盟軍に迎え撃たれる。

 立花が指示を出していた砲台は上下左右に三門づつ並べられ、各々順番に放たれていった。

 砲弾を節約する為にわざとゴブリンを御嵩に侵入させ、砲弾の弾道を利用し効率的にゴブリン達を外へと押し出した。

 数回砲撃をした所で、正面ゲートのバリケードは完全に無くなり、外に群がる敵にも被害を与えたがバリケードが無くなった分さらに多くのゴブリンが突撃して来る事になる。
 
 ゴブリンの突撃は止むこと無く続き、それに応じて砲撃が続いた。

 砲弾が切れた頃、横路からは火炎放射兵が中央通路を炎で埋めつくした。

 防壁からはゲートに群がるゴブリンに手榴弾が投げ落とされ、各自が必死の抵抗を行っていた。

 しかし敵の運動能力は高く、先の護国軍との連戦がたたり次第に横路から防衛線は崩壊し始める。

 地下シェルターへの退却が始まり、本多と伊達が率いる突撃隊が市街戦を繰り広げていた。

 各地で小規模な戦闘が繰り返され、次第に連盟軍は追い詰められていった。

 しかし彼等は粘り強く戦い続け、次第にゴブリンは逃げ始める。

 そこへ斎藤を乗せた見るも無惨なブルドーザーが正面ゲートから入って来た。

 血まみれのブルドーザーから降りた斎藤が息をつきゴーグルを外した時、防壁の上でゴブリン撤退の旗が降られた。

 これを勝機と捕らえた立花は砲台を移動させ、火龍を再度出撃させる。

 重機関銃でゴブリンを圧倒し、御嵩の至るところで反撃が開始された。

 援軍が無くなり、数が減っていったゴブリンは逆に次第に追い詰められていくことになる。

 多くのゴブリンが御嵩から逃げ出し、勝利の歓声と共に一気に市街に残ったゴブリンの掃討戦が始まり、皆が正面ゲートに集まった。

斎藤
「これは音が五月蝿くてかなわんわ」

伊達
「ゴブリンは撤退を?」

斎藤
「おお護国軍を追って行ったようだな」

立花
「お疲れ様です、助かりました。

 ゴブリンは予想外でした」

斎藤
「見たか!小僧この兵器をエンドロールと名付けた。

 肉耕しに最適じゃ」

立花
「素晴らしい発想ですね、でも後片付けが大変そうだ」

佐竹
「ちょっと外みてきましたが、吐きそうです」

伊達
「死体に集まってまたやって来るかも知れない、急いでゲートの復旧作業に取りかかります。
 
 貴方方はどうぞお休み下さい」

斎藤
「これを使え、アタッチメントを切り替えればミンチを集め易いぞ」

 佐竹は我慢できず吐いた。

伊達
「我々だけでは確実に勝てなかったでしょうが、何故か立花殿といると負ける気がしませんな」

立花
「私もです。後で少し話をお聞きかせ願えますか?」

伊達
「ああ、この辺りの状況が分からないんでしたね?」

立花
「ええ、でも今ので確信しましたよ、早急に東京を制圧しないと」

伊達
「やりましょう、このままただ黙って殺られる訳にはいきませんしね」

斎藤
「箱根から大軍を呼ぼう、また大戦争だな!」

立花
「佐竹、生きているゴブリンを何匹か生け捕りにしてくれ」

佐竹
「ハーハー、ウップ、ウエー」

立花
「じゃあ本多頼む」

本多
「了解」

 勝った事は良かったが皆はゴブリンの死体のせいでうんざりしていた。

 東名兵は生き残る事が出来なかったが御嵩の市民が慰霊碑を作り、弔いをおこなった。

 護国軍に次いでゴブリンの大群を退けた箱根軍は御嵩での名声を手にした。

 特に作戦を指揮した立花と単騎で外壁の外に残り戦った斎藤は今でも御嶽の知将と武将として英雄となっている。
 
 
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