咆哮するは鋼鉄の火龍
 立花と伊達は各ポリスに東京への進撃戦の伝達と、護国軍の掃討戦、御嶽の復興で追われていた。
 
 その中、立花はかつて島国の正規軍であった伊達から興味深い話を聞かされた。

立花
「NEOですか?」

伊達
「そうだ我々の元来の部隊はそれと戦っていたんだ」
 
 世界を滅ぼした兵器について伊達が詳しく話してくれた。

 まだ世界がその形を辛うじて保っていた時代。

 昔から世界中に馬鹿にされても開発を辞めなかった北の大国が生み出した世界崩壊の元凶。

 それは『NEO』(ネオ)と呼ばれるたった一人の人間だった。

 正確には「Neme、O」

 アルファベットで15番目のOで表記された第15世代の実験体の1人であった。

 彼は生まれる前から超能力訓練を受けてそだった大国の兵士である。

 彼らはNEOを生み出した張本人であったが、突如予想以上の成功をし日増しに強くなる彼の能力を抑える事が難しくなっていた。
 
 彼に埋め込まれた感情は繰り返し暗示をかけた殺戮の二文字。

 彼のその殺戮衝動は伝染し感染し各国の戦争の火種となり、自身も戦闘員となり多くの戦争に参加した。

 次第に強くなっていく彼を止めることが出来ず、NEOは世界に解き放たれてしまった。

 世界の半分を破壊して回った頃に北の大国はその存在を公表した。

 そうしなければならぬ程に世界は壊されていたからだ。

 しかし、もう手遅れに近く各国連携の戦闘も虚しく、多くの人々は逃げる事しか出来なかった。

 自衛軍がいたこの島国は警戒心が強く、他の国に先んじて地中に潜る『方舟計画』を立案し、残った兵力をかき集め防衛兵器を作り続けた。

 それが東名が所有し、箱根が奪った鷹揚であった。

 未知数の力を使い続けるNEOは、いずれ自己崩壊を起こすであろうと各国の科学者は考えていた。

 それほど迄に異様な力であったという。

 各国の軍はそれを促そうとNEOへと果敢にも挑み続けた。

 それには禁じられた兵器を聖戦と称して乱用し、残った半分の地も自らの手で消し去っていった。

 しかしそれがさらにNEOの暴走に拍車をかけた。

 NEOに挑む者は徹底的に殺戮され、戦意を失った抵抗軍は崩壊する他なかった。

 世界は押し潰され、残った人々はお互いに残った土地を互いに奪い合った。

 それすらもNEOの能力であったかは不明である。

 しかしNEOは次第に勢いが無くなり、そして突然死んだ。

 死因は急激な栄養失調による餓死。

 膨大なエネルギーを使い続けるには人の容量では栄養が足りなかった為であった。

立花
「おとぎ話みたいですね。確かな情報なんですか?」

伊達
「ああ神話でなく史実だ。

 護国軍が東京を掌握するまでに埋もれた情報を掘り出していてね」

立花
「たった一人の人間が世界をか…」

伊達
「いや、人同士の争いが一番の原因だったのかもしれない。

 彼もその犠牲者の1人だ。

 事実NEOが沈黙した後も人は戦い続けたんだ」

立花
「今もそうですしね」

伊達
「そうですね。

 重要なのはここからで、実際東京の地下に埋まっているのはこの情報だけじゃないって事です」

立花
「護国軍が全てを敵に回し、外法を使う程の貴重な情報が?」

伊達
「そう、一つはこの空の向こうに浮いていて地球の周りを飛ぶ器械を使って世界に呼び掛けられる施設」

立花
「他にも?」

伊達
「あらゆる施設、機材等の地中に隠された秘密の物質の保管場所」

立花
「トレジャーハンターが聞いたら発狂するでしょうね」

伊達
「だから我々も諦め切れないんですがね」

立花
「私はゴブリンの脅威さえ無くなればそれでいいですが」

伊達
「それが一番の埋蔵金かもしれませんな、そして我々の戦いも後世ではネオと同じ伝説になっているでしょうな」

立花
「勝てればですがね。

 出来れば誠実な勇者として語り継がれる事を祈ります」

伊達
「必ずヒーローで終わりましょう」

 二人は互いに第二の護国軍にならぬ事を誓いあったのであった。
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