咆哮するは鋼鉄の火龍
 箱根の軍が南方の東名に集結しているとの報を受け、立花は伊達に御嶽と連繋していたポリスの収拾を任せた。

 東名には立花が期待していた以上の軍が集まり、鷹揚は既に武器を積み東京に向け出発したとの事だった。

 一番驚いたのは顔色の悪い黒田が出てきている事だった。

立花
「黒田大佐!」

黒田
「慣れない事をするもんじゃないな、列車で酔って気分が悪い」

立花
「何故ここまで?」

黒田
「他のポリスの連中がどんなもんか見たかったのさ、それにこんな大戦で俺が出なきゃ格好つかんだろう?

 負けたら腹を切らにゃならんのでな」

立花
「切らせませんよ、しかしかなりの大軍ですね?」

黒田
「必要最低限の守備兵意外全て連れてきた。
 
 民兵にトレジャーハンター、ならず者まで東京の財宝目当てで集まってるぞ。

 俺だってお前等の前であれだけ息巻いたんだ。

 ポリス一つや2つ以上動かせにゃあお前の上官は勤まらんさ」

立花
「必ず勝って見せます」

黒田
「戦闘前にあまり気張りすぎるなよ」

榊原
「来い小僧、幾つか作った兵器の説明をしておく」

立花
「親方、少しやつれてますね」

榊原
「ここにゃあ腹を空かせた餓鬼が多いんだよ」

立花
「御嶽の食料を回して貰いますよ」

榊原
「そうしてくれるか」

 久しぶりの箱根軍との合流に火龍達の乗組員は喜んだ。

 その夜、東名の下には箱根の軍が夜営を行い、東名からは空にも下にも星空と人の営む煌めきが眺められ美しい夜景が望めた。

立花
「宇佐美ちょっといいか?」

宇佐美
「はっはいはい」
 
 すっかり回復し汗まみれで作業を行っていた宇佐美はあわてて汗を拭いた。
 
 二人は東名の端で夜景を見下ろした。
 
 沈黙に耐えられず宇佐美が話し出した。

宇佐美
「戦争中で不謹慎ですけど、綺麗ですね」

立花
「ああ、宇佐美…今度の作戦な?

 お前にはここに残って貰おうと思う」

宇佐美
「何ですか!傷はすっかり治りましたし、東名を制圧する前の戦いでも鷹揚の修理で置いてきぼりでしたよ?

 何かミスでもしましたか?」

立花
「いや助かってる」

宇佐美
「じゃあ何で!

 自分も火龍の一員です!

 最後まで皆と一緒に戦います!」
 
 宇佐美は泣きそうになって訴えた。

立花
「違うんだ。俺の勝手な判断だ」

宇佐美
「わかりません…わかりません」
 
 宇佐美は遂に泣いてしまった。

立花
「御嶽で結構危なかったろ?
 
 俺の最初で最後のわがままだ。
 
 聞いてくれ、頼む。
 
 話しは以上だ。
 
 これは命令でもある」

宇佐美
「自分がリトルより戦えないからですね?
 
 足手まといなんだ」

立花
「そうだ。足手まといだ」
 
 立花が去ると宇佐美は膝を抱えて泣き続けた。
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