咆哮するは鋼鉄の火龍
 出発の当日、御嶽からやってきた大軍が東京への切り替えポイントに集結しているのが東名から見えた。

 威風堂々とその中心に向かい進む火龍があった。

 この時、既に火龍は少数で東京までの遠征を繰り返しゴブリンを少なからず削っていた。

 全軍合わせて集まった兵はおよそ五千となっていた。

 箱根連合軍の代表は竹中、斎藤、立花。

 後方支援を黒田が受け持った。

 対する御嶽連合は伊達、佐渡ポリス代表の吉川、宇都宮ポリスの鈴木という者たちだった。

 佐渡は戦災を多少は免れた数少ない森林保有ポリスで、森に都市を構えていた為にそこに住む人々はエルフと呼ばれた。

 逆に豊富な鉱山資源を発掘した宇都宮はドワーフと呼ばれるに至った。

 双方に共に挨拶を交わして正式に同盟を交わし、同盟の立役者である立花を総大将とした。

立花
「私がですか?」

竹中
「黒田を大将に、斎藤を中将にとする。

 これだけの人数と兵器を集めた功績と、今回の作戦の立案者であるし、救われた御嵩の伊達殿の推薦があったのだ」

斎藤
「小僧はともかく何で黒田が竹中大将と同格で、わしが中将何ですか?

 納得いかん」

竹中
「わしは上級大将になる。

 それに政治なら黒田が上だ、今後箱根が二分せん為の政策だ」

斎藤
「くっ納得いかんな」

竹中
「お前も年だ。少しは大人になれ」

斎藤
「小僧!俺は暴れられなければクーデターを起こすぞ!」

立花
「では死ぬ程辛い戦いを」

斎藤
「望むところじゃ!」

吉川
「士気が高いですな」

鈴木
「伊達さん本当に大丈夫か?」

伊達
「護国軍はもういません。

 今度は負けませんよ」

竹中
「立花、号令をかけろ皆が待っているぞ」

鍋島
「延長コードで火龍の上からでも拡声器で話せる様にしました。

 音量最大です」

 各幹部が火龍に登り立花がを中心に立った。

 集まった兵士は皆は話すのを止め、七人の男達に集中して向き直った。

立花
「私は今回の総大将を勤める
 箱根代表の立花である!

 箱根の諸君!

 同盟に参加して頂いた
 御嶽、佐渡、宇都宮の戦士達よ!
 
 私は誓う!

 私は最後まで前線で戦う事を誓う。

 一人でも多く生きて帰らせる事を誓う!

 この固い同盟を最後まで貫く事を誓う!

 もうゴブリンの脅威に怯えない生活を誓う!

 私はこの戦いで人類再興を実現させる事を誓う!

 諸君も誓って欲しい。

 生まれてくる子等に誓って欲しい。

 父は、そして母は、
 
 勇敢に戦ったと胸を張って話してやると!

 垣根を越え集まった不屈の戦士達は。

 命をとして戦ったと!

 我等は栄光の同盟軍!

 進軍しよう!」

 東京を指差した立花に答え兵士達は地響きがなるほどの歓声を上げた。

 全軍が意気揚々と東京を目指して進んでいった。

 立花は東名に残る黒田と榊原の方に向け敬礼し、火龍に乗った。

 宇佐美は悲しそうに手を振った。

 それを見た榊原はニヤッと笑って宇佐美に話しかけた。

榊原
「あいつがな出発したらお前に伝えて欲しいってよ」

宇佐美
「何をです?」

榊原
「お前がいたら足手まといだってよ」

宇佐美
「もう聞きました、もう聞きたくないです」

榊原
「あいつ昨日おれん所きてお前をくれってよ」

宇佐美
「えっ?」

榊原
「お前がいたら気になって作戦に支障が出るってよ」

宇佐美
「えっ?えっ?」

榊原
「だから、立花がお前を嫁に欲しいってよ。

 好きな女に死なれちゃ困るってさ」

宇佐美
 (ギュイーーーン)

 宇佐美の右腕は煙を上げ高速回転していた。

榊原
「おいっ火傷するぞ」

宇佐美
「もう心に火傷しています」

榊原
「しょーもなっ!」

黒田
「俺にも娘が…」

榊原・宇佐美
「え?」

黒田
「あっ!やっべ」
 
 それぞれの想いを乗せ火龍は決戦に向け先陣を切った。
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