咆哮するは鋼鉄の火龍
 東京の外周には環状線が貼られていた。

 その環状線復旧作業が完了した線路の上を火龍の他に何台もの列車が走っていた。

 列車は一定間隔を空けて同じ方向に円を走り続けていた。

 火龍に立花、他に御嶽、佐渡、宇都宮の代表と、かき集められた武器が積まれ環状線内側の東京を見張っていた。

 竹中と斎藤は南北に兵を置き出来る限り鉄道を走る車両が一定間隔で走れるように指示を出し待機していた。

 多くの戦車や車が環状線の至るところに配備され、ゴブリンの死体は焼かれ、出口を塞がれたゴブリン達は腹を空かせたが、外を走る列車と車両を警戒し出るに出られなかったのだ。
 
 何匹かのゴブリンが建物の隙間をぬい逃走を試みたが、直ぐに駆けつける車両の砲撃に恐れをなして再度東京に逃げ込んだ。

佐竹
「最近出てくる頻度が増えて来ましたね」

立花
「腹が限界なんでしょう、もう少しですね」

 それから数日間、東京の中では悲鳴が夜な夜な聞こえた。

 それは時間と共に数が増え、それが収まると満を持して斎藤の部隊が突入した。

 東京の中は移動要塞とビルに阻まれ日の光が届かず、薄暗かった。

 いくら猛者揃いの朱達磨達でも恐れを抱かずにはいられなかったが、斎藤はずかずかと踏み込んでいった。

斎藤
「皆、死んどるの、この骨は人じゃ無かろうが」

本多
「立花少将の言った通りになりましたね」

 その会話を聞きつけたのか通常よりも大きいゴブリンが現れた。

 皆は驚いたが斎藤は冷静に向かって来るゴブリンを撃ち殺した。

斎藤
「強い奴等が生き残るのが世の常かの」

 立花はエネルギー消費が激しい強化人間の特色と理性が低いゴブリンの性質を生かし事前に実験を行っていた。

 何日も食事を与えなかった檻のゴブリンは数が減少し、そこに元気な個体を入れると最後に入れた個体が生き残ったのである。

 また、元気な個体と弱りきった個体、そしてその2匹の個体の目の前でゴブリンと戦い銃を持った本多を檻にいれると、一番早く消えたのは弱りきった個体であった。

 ドクターが胃を裂くと、そこには予想通りの結果が出た。

 これにより空腹に強いゴブリンは体に蓄えたエネルギーを消費して人より長く生存はするが空腹を紛らわせる事が出来ずに共食いを始める事が分かった。

 またその過程で自分よりも強い他種族よりも弱い同族を狙う習性を発見した。

 立花はこれを利用した。

 あえて弾薬を使いきる程の力を見せ、人間が脅威である事を示し、東京を包囲して自滅にさそったのだ。

 東京の中では熾烈な争いがあったであろう。

 弾薬を使い果たす事で暫くはポリス間の戦争を無くせるのではと立花は考えていた。

 ここに東部は真に統一される事となる。

 斎藤からの知らせで東京解放戦は呆気なく幕を閉じた。

 外で辛抱強く待っていたトレジャーハンターは喜びの歌を歌っている。

 これから東部は復興に本格的に乗り出すであろう。

 被害者はおよそ二百と奇跡的に大勝利に終わり、その作戦を指揮した立花がいる箱根はその地位を確立した。

 
佐竹
「結局ゴブリンって知能が低いんですね」

立花
「我々と一緒ですよ、結局おんなじ事をやってるでしょ」

佐竹
「強い外敵と交戦を避け弱者を食い物にするか、確かに」

立花
「さてと、ここの利権争いが起こらないように次は人間を監視しないと」

片倉
「その前に温泉入りましょうよ、臭くって」

佐竹
「珍しく片倉に一票ですね」

立花
「やっぱり家族に会いたいですか?」

佐竹
「自分だって宇佐美がいる癖にー」

鍋島
「前方の竹中上級大将から停止信号です。

 お客さんみたいですよ」

立花
「止めろ」

 外から聞き慣れた胸が踊る駆動音がした。

 みんながにやけて立花を見た。

片倉
「さすが名指揮官、お見事」

佐竹
「恋も作戦の内ですか?」

鍋島
「赤松を止めなくては
   焼き餅やきますからね」

立花
「うるさいぞ」

 立花は嬉しそうに明るい光が差す外へ

 火龍の中から踊り出た。

 そこには笑顔の黒田がいた。

 そしてその横には

 それ以上の笑顔の………

 こうして護国軍を発端とした第一次東部統一戦争の敗北から続く長い戦いは、一応の決着がつき、人はこの戦いを『第二次東部統一戦争』として、特に人気のある英雄談として今もなお語り継がれる。
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