咆哮するは鋼鉄の火龍

迎え撃つは墓標の盗賊団

 箱根を出て暫く行くと切り替えポイント着く、切り替え作業員達は装甲列車に手を降りスムーズに北進路へと路線を変更する。

 そこからは単線になり、辺から人工的な建造物は無くなっていった。

 日が沈み、夜が明けると朝日に照らされ小さいポリスが見えた。

 変電所施設を持った人類再編統括本部の要塞ポリスの一つで、前回の北方ポリスからの侵攻を食い止めた最終防衛地点であった。

 基地からは皆が物珍しそうに火龍を見ている。

 立花と佐竹には馴染みの基地であったが、今回は電撃侵攻作戦の為に簡易的な報告だけを行いそこを後にした。

 駐屯していたかつての上官から、第一目標であるここ最近の盗賊団の情報を元に、走る火龍の指揮車では作戦会議が行われていた。

立花
「墓標の野盗団かー」

佐竹
「発電所の守備兵よりある意味厄介ですね」

 二人を悩ませていたのは敵の先遣隊であった。

 先の戦争後に発電所を奪還せんと箱根から幾度も軍が送られる度に必ず苦しめられた存在であった。

 彼らは箱根軍と北部軍が衝突し、多くの兵が死んだ激戦地を根城にし、変わり果てた地形と、そこに眠る兵器の残骸に待ち伏せし、ゲリラ戦を展開させるのが常套手段であった。

 固い残骸を盾に、いりくんだ地形を隠れ蓑に戦い補給線を断ち、後方撹乱された箱根軍は脆くも敗退する羽目になる。

 彼らは戦争後は箱根北部を荒らし回っていたので、墓標の盗賊団と呼ばれていた。

 計測長の片倉伍長が脅かすように言った。

片倉
「何でも古戦場で出てくるのは盗賊だけじゃなく、

 かつての英霊達が出てくるそうですよー」

立花
「じゃあ北軍の霊より、うちの方が数が多いから守ってくれてるだろうさ」

片倉
「安心なんだか悲しいんだか」

立花
「冗談はさておき、

 やっぱり古戦場跡に敷かれているレール周辺は地形がいりくみ過ぎて射撃線がとれず火力が生かせないな」

佐竹
「まー襲ってくるのはそこでしょうね、長距離射撃でいぶり出しては?」

立花
「初戦だから弾薬の消費は避けたい所ですね、通る前に線路が破損するのも面倒ですし」

佐竹
「でも名案があるんでしょ?」

立花
「そりゃありますよ、しかも秘密兵器が、箱根出るときに貰って来たんです」

佐竹
「流石は一休殿」

立花
「各車両に繋いでくれ、作戦指示を行う」

佐竹「はっ」
 通信手が回線を開き今回の作戦が話された。

 何度も盗賊団と箱根軍は交戦経験があり、報告も多くあったお陰で先んじて立花は一考を案じていたのだった。

立花
「…以上が今回の作戦である。

 不明な点については各責任者が指揮車まで来るよーに。

 作戦開始までに食事と休憩を採れ。

 警戒は各車両で交代で行うように、

 以上」

立花
「まーこの火龍なら古戦場を抜けるには問題はなさそーなんだけど」

佐竹
「平地に出たらこっちに分がありますよ」

立花
「レッドキャップがねー引っ掛かってくれればいいけど」

佐竹
「以上に強い頭領でしょ?

 ブラックリスト入りの」

片倉
「首をとったら手柄ですね」

立花
「ちょっと後方車両に行ってきます、今回の主役ですし」

佐竹
「じゃあ私はコックの所に、彼の料理辛くって」

片倉
「俺は好きなんすけどねー」

佐竹
「じゃお前が幽霊の仲間入りしたら唐辛子供えとく」

片倉
「結構です」
 
 いよいよの戦闘開始で車内は活気と熱気に蒸せ返り、佐竹はコックの料理にまたもむせていた。
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