狡猾な王子様
「農協で、甘みが強そうな物を見繕って来ますね」


「助かるよ。冬実ちゃんの選定眼は頼りになるから」


「本当ですか?」


「うん。いつもいい物を持って来てくれるし、冬実ちゃんにお願いして失敗したことはないからね」


「嬉しいです。まぁ、私の選定眼は野菜オンリーなんですけどね」


「果物もでしょ?」


「えっと、そっちはまだちょっと……」


「でも、前に持って来て貰った果物もいい物だったし、これからも期待してるよ」


「あんまりプレッシャー掛けないでください」


「なに言ってるの、ジュニア野菜ソムリエの資格を持ってるんだからさ。もっと自信持っていいんじゃない?」


悪戯に微笑む英二さんに苦笑を返しながらも、彼の言葉が本当に嬉しかった。


山野農園で採れない野菜は、近所の農協で見繕って配達している。


これは、私が自ら言い出したこと。


もちろん、こういった特別扱いがよくないことはわかっている。


だけど……。


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