狡猾な王子様
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そんなわけで、最近は木漏れ日亭への配達の日には、とにかく佐武さんと鉢合わせしないことだけを願っていた。
とても綺麗で、隙がまったくなくて、きっと頭もいい女性。
同性から見ても羨望の眼差しを向けたくなる人だけど、私は佐武さんのことがどうしても苦手だから……。
沸々と燻る黒い感情は、嫉妬なのかもしれない。
英二さんと体だけの関係になりたいわけではないし、もちろん仮にそんなチャンスがあったとしても全力で首を横に振るだろう。
だけど……。
だからと言って、私が決して立てないポジションに堂々と立っている佐武さんを羨ましく思わないわけじゃない。
頭では彼女のようにはなれないとわかっているのに、少しでも英二さんの近くにいられるのはやっぱりとても羨ましいと思ってしまうのだ。
あまりにも矛盾する気持ちを抱いているのはとても複雑で息ができなくなりそうなくらい苦しいけど、上手く消化する術を見付けられない以上はそれも仕方ないのだろう。