狡猾な王子様
「よく触れるよね」
「あんなの素手で触って、気持ち悪くないのかな?」
悪いことをしているわけではないのになんだか居た堪れなくて、蔑むように笑うふたりから視線を逸らして踵を返した。
そのままドアから少し離れた場所にある小さな花壇にミミズを置いたけど、振り返る勇気が出ない。
程なくして、恐らく女性たちが乗り込んだであろう車のエンジン音が背後で響いた。
「あの……」
「え?」
不意に遠慮がちに声を掛けられて思わず振り返ってしまうと、すぐ後ろに可愛らしい女性が立っていた。
小さな顔の中で一際綺麗な二重の瞳が、まるでさっきの出来事で重くなった私の心を癒やすように柔らかく緩められる。
「もしよかったら、これ使ってください」
優しい声音が耳をそっと撫で、そこでようやく聞き慣れない声の持ち主だと気付く。
「手、少し汚れてるみたいですから」
そんな私を余所にハンカチを差し出しながら微笑んだ彼女を見て、思わずキョトンとしてしまった。
「あんなの素手で触って、気持ち悪くないのかな?」
悪いことをしているわけではないのになんだか居た堪れなくて、蔑むように笑うふたりから視線を逸らして踵を返した。
そのままドアから少し離れた場所にある小さな花壇にミミズを置いたけど、振り返る勇気が出ない。
程なくして、恐らく女性たちが乗り込んだであろう車のエンジン音が背後で響いた。
「あの……」
「え?」
不意に遠慮がちに声を掛けられて思わず振り返ってしまうと、すぐ後ろに可愛らしい女性が立っていた。
小さな顔の中で一際綺麗な二重の瞳が、まるでさっきの出来事で重くなった私の心を癒やすように柔らかく緩められる。
「もしよかったら、これ使ってください」
優しい声音が耳をそっと撫で、そこでようやく聞き慣れない声の持ち主だと気付く。
「手、少し汚れてるみたいですから」
そんな私を余所にハンカチを差し出しながら微笑んだ彼女を見て、思わずキョトンとしてしまった。