狡猾な王子様
それから、私と瑠花さんは英二さんに促されてカウンターの椅子に腰掛け、彼が淹れてくれたアイスティーを飲みながら三人で話した。


「この間の紅茶、理人(りひと)のイギリス土産なんだよ」


「そうだったんですか」


理人さんとは、英二さんの親友、つまり瑠花さんの旦那さんの名前。


それを教えて貰ったのは、このアイスティーを飲み始めてすぐのことだった。


「たしか、一週間くらい行ってたんだっけ?」


「五日間です。本当は一週間の予定だったんですけど、他の仕事のスケジュールがかなり押してたとかで、無理に日程を調整したみたいで……」


「あいつらしいね」


「はい」


英二さんと瑠花さんは共感し合ったあとで、少しだけ困ったように苦笑していたけど……。


彼女の幸せそうな表情を見れば、理人さんが素敵な男性なのは間違いないのだろうと思う。


幸せオーラに包まれている瑠花さんはとても眩しくて、なんだか私とは別世界の人のように思えた。

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