狡猾な王子様
「なんだよ、ニヤニヤして……。そんなに可愛い子だったのか?」


「もう!秋ちゃんの思考回路って、どうしてそうなの?そりゃあ、たしかにすごく可愛い人だけど」


「へぇ、今度連れて来いよ」


「南ちゃんに言い付けるよ」


「冗談も通じないのか、お前は……」


秋ちゃんはため息をついたあとで、おもむろに私の顔をじっと見た。


「……なに?」


「別に。この間まで死にそうな顔してたけど、ちょっとはマシな顔付きになったな、と思っただけ。本当に不細工な顔してたから、お前」


なんともぶっきらぼうな口調だったけど、そこに隠された優しさにはすぐに気付いて微苦笑を返す。


「ごめんね……」


「はぁ?なんで謝る必要があるんだよ?」


この台詞を春ちゃんとなっちゃんが聞いていたら、きっと『秋はどうしてそんな言い方しか出来ないんだ』なんて言うに違いない。


そんなことを想像してフフッと笑ったあとで、軒下に置いてあるサンダルを履いて庭に足を踏み出した。

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