狡猾な王子様
「おい、なにやってんだ。濡れるぞ」


「いいよ、まだお風呂入ってないし」


季節はすっかり秋なのに、霧雨にも似た雫がなんだか心地好い。


「決めた!」


その中で決意の声を上げると、秋ちゃんが怪訝な顔をした。


そんな秋ちゃんに笑顔を返し、息を大きく吐いてから口を開く。


「私、ダイエットする!」


「は?」


目を見開いた秋ちゃんがそのあとすぐにこれみよがしに大きなため息をついたのは、今までの失敗をよく知っているからだろう。


だけど……。


「今度は本気だよ」


自分自身を甘やかすのは、もうやめようと思うから。


私が太っているのは、体質や遺伝のせいだけでははい。


本当は、野菜中心のヘルシーな食事に甘えて食べ過ぎることもあった。


最近に至っては、お菓子を食べる頻度が増えていた。


正直なところ、体重計に乗ればギリギリ60キロを越すか越さないかの数字を行き来していた二ヶ月前よりも、確実に3キロは増えてしまっているのだ……。

< 121 / 419 >

この作品をシェア

pagetop