狡猾な王子様
程なくして居間に行くと、いつの間にかそこにいたお父さんが新聞を読んでいた。


仲よく日課の散歩に行っていたおじいちゃんとおばあちゃんも、とっくに食卓に着いていたみたい。


ふたりは冷たい麦茶を飲みながら、すっかり寛いでいた。


「おはよ〜」


「おはようございます」


そこへ入って来たのが、こちらもまた離れに住んでいる“なっちゃん”こと次男の夏樹(なつき)と、奥さんの弥生(やよい)ちゃん。


「おはよう」


皆で声を揃えるようにして挨拶を返すのは、いつもと同じ光景。


家族のほとんどが集まった居間は、やっぱり今日も賑やかだ。


「秋雄(あきお)は?」


「あれ、まだ降りて来てないの?」


「まだ見てないぞ」


「じゃあ、秋ちゃんまた寝坊かな?」


三男の秋ちゃんのことを口にしたお父さんに、小首を傾げて独り言のように呟く。


すると、皆がまたかと言わんばかりに微苦笑を零し、お父さんが小さなため息をついた。

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