狡猾な王子様
「昼間にお話した時、英二さんなんだか元気がなかったみたいだから、ちょっと気になって……」


「そっか。それで、わざわざ来てくれたんだ」


英二さんはいつものような柔らかい表情を見せ、「ありがとう」と微笑んだ。


お礼を言われるなんて思ってもみなかったから驚いて、そのあとすぐに首を小さく横に振った。


「余計なことしちゃって、すみませんでした」


「謝らなくていいよ」


「でも……邪魔、しちゃったから……」


「まぁ……たしかに、前に続いてすごいタイミングではあったよね」


「本当にすみません。私、本当に邪魔なんてするつもりはなくて……」


呆れたように笑った英二さんに頭を下げようとすれば、彼は慌てて私の肩を押して制した。


「いや、別に怒ってるわけじゃないんだよ?それに、店の鍵を閉めてなかった俺も悪いし……。だから、もう気にしないで」


気にしないなんて、絶対に無理。


だけど、なんとか小さな笑みを繕い、戸惑いながらもコクリと頷いた。

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