狡猾な王子様
静まり返った部屋の外から、ドアがバタンと閉まる音が聞こえて来た。
きっと、佐武さんが帰ったのだろう。
夜だということに、英二さんとふたりきりになってしまったということが相俟って、途端に糸が張り詰めたように緊張した。
「……これ、貰ってもいいのかな?」
「え?」
視線を彷徨わせていた私は、優しげな声に導かれるように英二さんを見上げる。
すると、彼がタッパーに視線を落とした。
秋ちゃんの提案で口実にする為に持って来たそれは、たしかに英二さんに食べて貰うつもりだったけど……。
「でも……落としちゃったので……」
器ごとタッパーに入れて来たとは言え、床に落下したのだからきっと中はグチャグチャになってしまっているだろう。
そんな物を食べて貰うわけにはいかないから、怖ず怖ずと手を伸ばして返して貰おうとしたのに……。
「きっとグチャグチャだと思うので、持って帰りますね」
英二さんは、やんわりと制するように笑みを浮かべた。
きっと、佐武さんが帰ったのだろう。
夜だということに、英二さんとふたりきりになってしまったということが相俟って、途端に糸が張り詰めたように緊張した。
「……これ、貰ってもいいのかな?」
「え?」
視線を彷徨わせていた私は、優しげな声に導かれるように英二さんを見上げる。
すると、彼がタッパーに視線を落とした。
秋ちゃんの提案で口実にする為に持って来たそれは、たしかに英二さんに食べて貰うつもりだったけど……。
「でも……落としちゃったので……」
器ごとタッパーに入れて来たとは言え、床に落下したのだからきっと中はグチャグチャになってしまっているだろう。
そんな物を食べて貰うわけにはいかないから、怖ず怖ずと手を伸ばして返して貰おうとしたのに……。
「きっとグチャグチャだと思うので、持って帰りますね」
英二さんは、やんわりと制するように笑みを浮かべた。