狡猾な王子様
泣いたところでなにかが変わるわけではないのに、この数時間の出来事が私の心を追い詰めるようで……。


行き場のない様々な感情がグルグルと渦巻き、次から次へと溢れる涙は止まりそうになかった。


実りようのない恋がこんなにもつらいなんて、知らなかった。


失恋の経験はあるけど、過去に刻まれた淡い恋や傷が簡単に癒えてしまった恋なんかとは比べものにならなくて。


自分の中で勝手に膨らんでいく想いの抑え方すらわからない私には、この恋に終止符を打ちたくてもその術がわからない。


“このままでいい’’なんて、やっぱり綺麗事。


ただ会えるだけで嬉しいと思えない今の私は、いつの間にかとても欲張りになってしまったのかもしれないけど……。


よくよく考えてみれば、好きな人に頻繁に会えるだけで嬉しいと思えるのなんてきっと恋が始まった頃だけで、こうして欲張りになっていくのが自然なことなのかもしれない。


ましてや、この想いはずっと報われることはないのだから……。

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