狡猾な王子様
「こら、ふう!俺はちゃんと起きてるぞ!」


秋ちゃんを起こしに行こうと踵を返したところで、ちょうど居間に入って来た秋ちゃんと鉢合わせた。


「あ、秋ちゃん」


「まったく、お前は……。失礼なこと言うんじゃねぇ」


「ごめんね、秋ちゃん。おはよう」


ニッコリと笑うと、秋ちゃんが不服そうに小さく舌打ちをした。


「ふうは悪くないよ。だから、謝る必要はないからね」


いつも温厚な春ちゃんの言葉に、なっちゃんが胸元で腕を組みながら「うんうん」と頷いている。


「そうだ、ふう。そんな風に思われるくらい、常日頃から寝起きの悪い秋雄が悪いんだ」


「うるせぇ。こっちは夜勤明けで、めちゃくちゃ寝不足なんだよ」


「本当にごめんね、秋ちゃん」


「もういい」


低血圧な上に夜勤明けの秋ちゃんは、とても不機嫌な顔をしていたけど……。


「秋雄、いい加減に座れ」


様子を見ていたお父さんに叱責され、各々が所定の場所に腰を下ろした。

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