狡猾な王子様
十二月も下旬になり、居酒屋などの飲食店からの注文が増えるようになった。


それは毎年のことで、年末に向けて忘年会の予約が入るお店からの注文量は多い場合には約二倍になる。


その分というわけじゃないけど、スーパーや農協からの注文は徐々に減ってしまうのも例年通りのことで、結局のところ忙しさは普段とあまり変わらない。


「今年も三十日まで注文が入りそうなの?」


「たぶんね。でも、お節の支度は手伝うよ」


「助かるわ」


一件でも注文がある限り年末ギリギリまで請け負うのは昔から変わっていないけど、その時期にはお兄ちゃんたちが休暇に入っているから畑仕事や配達は任せて、女性陣は新年の支度に力を入れる。


大して遊ぶ施設がないような地域だから、年末年始に営業しているお店もほとんどないけど……。


三年前に車で二十分程の場所に比較的大きなショッピング施設ができたお陰で、以前までのように女性陣総出で年末に食材を買い込む必要がなくなったことは本当にありがたかった。

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