狡猾な王子様
「いただきます」


「いただきます」


いつものようにおじいちゃんが口を開くと、続いて皆が両手を合わせながら声を揃える。


それから、食器とお箸の当たる音が響き始めた。


「ふう、お醤油取って」


「うん」


広い食卓に乗っている醤油差しはふたつで、そのひとつをおばあちゃんに渡す。


「ばあさん、わしにも醤油を貸してくれ」


「はいはい、どうぞ」


「あ〜、眠い」


「秋雄、さっきからそればっかりだね」


「春一、今日は早出でしょ?急がないと」


「そういえば、夏樹も朝練じゃなかった?」


「うん。大会前だし、生徒達も早く来るだろうな」


「母さん、ご飯のお代わりくれ」


「はいはい」


常に飛び交う会話は、食卓をさらに賑やかにする。


十人もいれば常に誰かが話しているから、我が家の朝食の時間が静かなことはない。


言い換えれば“煩い”とも取れるくらいに賑やかな雰囲気だけど、私はこんな風に過ごせる時間がとても好き。

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