狡猾な王子様
カラフルな装飾に彩られていた街が和風に変わり、あちこちでしめ縄や門松を目にするようになって数日が経った。


休むことのできない畑仕事だけをこなしていた三が日もあっという間に過ぎ、四日以降は一部のお得意様からの注文を承って配達をしている我が家はすっかり通常運転だ。


朝食に七草粥を口にした日からは注文も平常通りの量になり、正月ボケを味わう間もなく慌ただしく生活している。


三が日までの畑作業は家族総出でこなしたけど、五日前後には皆が仕事始めを迎えたから、ラクをできたのは三が日だけ。


年越し蕎麦やおせちを食べたり、初詣に行ったりと、年末年始特有のことは家族揃って一通り済ませたけど……。


クリスマスイヴからずっと気分が沈んだままの私は、どんなに賑やかな時間でも心の底から楽しむことはできなかった。


そんな私の心情を察してか、お兄ちゃんたちはずっと気にかけてくれていた。


特に秋ちゃんはいつも以上に構ってくれて、その優しさに感謝しつつも何度も苦笑してしまった。

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