狡猾な王子様
南ちゃんと出掛けた日から、一週間が過ぎた。


特に大きな出来事もなければ、なにが変わったということもないけど……。


「最近、機嫌いいわね。なにかいいことでもあったの?」


周りから見るとそんな風に映るようで、朝食の支度をしている時に母がニコニコ笑いながら言った。


「昨日の夜、春ちゃんとなっちゃんにも似たようなこと言われたよ。でも、別に特別いいことがあったわけじゃないんだけどなぁ」


「あら、そうなの?」


英二さんへの想いを改めて認め、あの日から“私なんか”と俯かないように気をつけているだけ。


ただ、そのふたつは私の表情を明るく見せるのか、お兄ちゃんたちいわく千佳子ちゃんと弥生ちゃんも同じようなことを口にしていたのだとか。


「皆、ふうのことをよく見てるのよ。末っ子だし、兄妹で唯一の女の子だから」


モヤモヤとしていた頃の元気がなかった私を皆が心配してくれていたことは知っているけど、改めて言葉にされたことで喜び混じりのくすぐったさが込み上げてきた。

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