狡猾な王子様
午前中の作業を済ませたあと、夜勤明けだった秋ちゃんと一緒に配達用の荷物を車に積み込んだ。


「ほら、これで最後だ」


「うん」


春ちゃんやなっちゃんとは違って、秋ちゃんはなにも言ってこない。


家族の中でもきっと特に気に掛けてくれていたのは秋ちゃんで、だからこそ南ちゃんに私のことを頼んでくれたのだろう。


彼女が先日のことを一部始終話すとは思えないから、恐らく詳しいことはなにも知らないはずなのに……。


秋ちゃんの態度は至っていつも通りで、むしろ以前までよりも優しく見守ってくれているような気がする。


「なんだよ?」


無意識のうちに秋ちゃんのことをじっと見つめてしまっていたらしく、怪訝そうに眉を寄せられた。


ぶっきらぼうな態度は相変わらずで、口だって周りから呆れられるほど悪い。


「なんでもないよ。ありがと」


それでも、わかりづらく与えられる優しさが嬉しくて微笑むと、作業のお礼を言われたのだと受け取ったらしい秋ちゃんは「おう」とだけ言った。

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