狡猾な王子様
「女の子、かぁ……」


二十六歳にもなって、“女の子”なんて言って貰うのはおこがましいとは思う。


だけど……。


女性であることを捨てているような私をそんな風に言ってくれる人がいて、ほんの少しだけ嬉しい。


ただ、他人の目から見ても明らかに“太ったこと”がショックで、車の中ではため息ばかりが漏れた。


「これは……ギリギリぽっちゃりのレベル……?」


シートベルトのウエスト部分に乗った、お腹の贅肉。


「やっぱり、デブなのかな……」


出来ることなら、見て見ぬ振りをしたいところだけど……。


最近はジャージやスウェット以外のパンツ類のウエストがきついのもたしかで、さすがにヘラヘラ笑っている場合じゃない。


数え切れないくらい挑戦したダイエットでは、その度にリバウンドを繰り返して失敗して来た。


今は、60キロの手前でなんとか留まっているレベル。


言うまでもなく、このままだと間違いなく“デブ街道まっしぐら”になってしまうだろう……。

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