狡猾な王子様
「話したのは、たまたまです。と言っても、ほんの少し会話しただけなので、英二さんのおばあさまのことはよく知りません」


「俺のこと、ロクでもない孫だとでも言ってた?」


冷たい声のままの英二さんの言葉に、慌てて首を横に振ったけど、ため息をついた彼には信じてもらえていないのだとわかる。


取り繕うことはできないと感じ、意を決して正直に話すことにした。


「正直に言うと……厳しい方だな、って思いました。英二さんのことをロクでもない孫だなんて言われてませんでしたけど、すごく厳しい方なんだっていうのはわかりました」


「あの人はそういう人なんだよ。俺のことも兄貴のことも、ただの跡継ぎの駒としか考えてない。家が大切すぎて、子どもや孫の気持ちなんて二の次なんだ。……ずっと、そうだったんだ」


悲しげに笑った彼に、胸が詰まる。


英二さんはきっと、その時の精一杯の力で彼の祖母や家族と向き合う努力をしたのだろう。


そうでなければ、こんな風に悲しそうな笑顔を見せるはずがない。

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