狡猾な王子様
英二さんのお店に来る女性たちは綺麗な人ばかりで、劣等感に似たものが芽生えてしまう。


基本的に準備中に配達をしているから普段はお客さんと会うことはないけど、たまに営業時間中に行く時にはいつも惨めな気分になる。


そして、英二さんの笑顔にドキドキしてしまうのもいけないことのような気がして、他のお客さんがいる時にはまともに会話もできない。


やっぱり卑屈なのかも……。


考えれば考える程、惨めになっていく。


昔からぽっちゃりしていた体型は遺伝だろうし、食べることが大好きな私に食事制限は難しい。


なによりも、農家の娘だからこそ食べ物を残すことに抵抗が強くて、出された物は完食しないと気が済まないのだ。


「私は私だもん……」


痩せたからと言って、あのモデルのような女性みたいになれるわけじゃない。


あんな綺麗な女性とは、そもそも住む世界が違うのだから……。


自分自身にそう言い聞かせ、今日もでこぼこ道に揺られながら帰宅した──。

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