狡猾な王子様
震えそうな手を箱から離すと、「ちょっと早いバレンタインです」と必死に笑って見せた。
「じゃあ、また来週に」
「冬実ちゃん……」
英二さんは、なにかを言いかけながら調理場から出てこようとしたけど、笑顔でそれを制した。
「今日はここで」
見送ってもらうような雰囲気ではないし、お互いのためにもここで別れる方がいいだろう。
「余計なこと言って、すみませんでした。それから、おばあさまのことを話すのが遅くなったことも、本当にごめんなさい」
「いや、それは……」
言葉に詰まった彼に頭を下げたあとで、とんでもないことを言ってしまったような気がして、今になって心臓がバクバクと騒ぎ始めた。
「紅茶、ご馳走さまでした。残しちゃってごめんなさい。……あの、本当に色々とすみませんでした」
どうせならもう少しだけ待っていて欲しかったのに、確実に速くなっていく拍動のせいで平静を装う自信がなくて、英二さんの返事も聞かずに一目散にドアに向かうと、逃げるように外に出た。
「じゃあ、また来週に」
「冬実ちゃん……」
英二さんは、なにかを言いかけながら調理場から出てこようとしたけど、笑顔でそれを制した。
「今日はここで」
見送ってもらうような雰囲気ではないし、お互いのためにもここで別れる方がいいだろう。
「余計なこと言って、すみませんでした。それから、おばあさまのことを話すのが遅くなったことも、本当にごめんなさい」
「いや、それは……」
言葉に詰まった彼に頭を下げたあとで、とんでもないことを言ってしまったような気がして、今になって心臓がバクバクと騒ぎ始めた。
「紅茶、ご馳走さまでした。残しちゃってごめんなさい。……あの、本当に色々とすみませんでした」
どうせならもう少しだけ待っていて欲しかったのに、確実に速くなっていく拍動のせいで平静を装う自信がなくて、英二さんの返事も聞かずに一目散にドアに向かうと、逃げるように外に出た。