狡猾な王子様
厳しい寒さが続く中で二月も終わりを迎える頃、英二さんに自分の気持ちを伝えてから二週間が経とうとしていた。
あの翌々日の日曜日はバレンタインデーで、彼に渡したチョコレートの行方を気にしながら過ごす一日はとても長く感じ、家族に渡すために作ったチョコレートマフィンの出来はなんとなくいまいちだったような気がした。
それでも、みんな笑顔で完食してくれて、どんよりとした気持ちでいた私の心はその温もりのおかげで僅かに晴れた。
そして、バレンタインデーの翌日に木漏れ日亭に配達に行くと、英二さんは少しの沈黙のあとにいつものように微笑んでくれた。
ただ、私の告白のことにも彼のおばあさんのことにも一切触れてくることはなく、ぎこちない雰囲気の中で交わす当たり障りの会話はまるで誰かが用意した台本を棒読みしているようで、笑顔が引きつってしまいそうだった。
英二さんとの距離が今まで以上に遠くなったことを自覚すると、やっぱり悲しくなったし、後悔を感じるはめにもなった。
だけど……。
あの翌々日の日曜日はバレンタインデーで、彼に渡したチョコレートの行方を気にしながら過ごす一日はとても長く感じ、家族に渡すために作ったチョコレートマフィンの出来はなんとなくいまいちだったような気がした。
それでも、みんな笑顔で完食してくれて、どんよりとした気持ちでいた私の心はその温もりのおかげで僅かに晴れた。
そして、バレンタインデーの翌日に木漏れ日亭に配達に行くと、英二さんは少しの沈黙のあとにいつものように微笑んでくれた。
ただ、私の告白のことにも彼のおばあさんのことにも一切触れてくることはなく、ぎこちない雰囲気の中で交わす当たり障りの会話はまるで誰かが用意した台本を棒読みしているようで、笑顔が引きつってしまいそうだった。
英二さんとの距離が今まで以上に遠くなったことを自覚すると、やっぱり悲しくなったし、後悔を感じるはめにもなった。
だけど……。