狡猾な王子様
だからこそ、これからはこの恋心が消える日を待とうと思う。


最初からわかっていた通り、私の想いが叶うことはなかった。


それでも、悲しいだけではなかった恋だから、ちゃんと終わらせられるような気がしている。


今はまだ想像もできないけど、例え時間が掛かったとしても、いつかまた英二さん以外の男性に恋情を抱ける日が来てほしい。


仕事上、頻繁に顔を合わせるから簡単には気持ちを消すことはできないだろうけど、前よりもずっと清々しさを感じている今なら、時間がそれを手伝ってくれるのではないかと思うのだ。


そのために、あの日以降は必要なことと少しの世間話しかしないように努めていて、毎回出してもらっていた紅茶もきっぱりと断った。


強引な部分もあるけど、優柔不断な私はこれくらいしなければ気持ちが揺らいでしまいそうだったし、なによりも物理的なことを変えなければ諦められそうになかった。


だから、そんな風に彼との時間を失くすことで、自分自身に“大丈夫だ”と言い聞かせ続けていた──。

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