狡猾な王子様
「……ううん、きっとお互いにつらくなる時が来ると思います」


“かもしれない”なんて言ったって仕方がないとわかっているから、敢えて言い方を変えた。


その理由を口にするのは怖かったけど、ここで本音を言えなければ、きっと英二さんと向き合うことはできない。


「だって、私、嫉妬深いんです……」


だから、小さな声音だったけど、彼を見つめながら正直に告げた。


「英二さんの心に踏み込んだ時は、見返りなんて求めてなかった。本当に英二さんの笑顔が見たい一心でした。でもさっき、英二さんがこれからの恋愛のことを話し始めた時、いつか英二さんの恋人になる人を想像して嫉妬したんです」


矛盾した感情はきっと仕方のないことで、誰だって感じるものなのかもしれない。


「英二さんは私のことを真っ直ぐだって言ってくれたけど、本当はそんなんじゃなくて……言動が矛盾してるうえに、心の狭い人間なんです」


それでも、英二さんに幻滅されてしまって、彼が心変わりするのではないかと不安で堪らなかった。

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