狡猾な王子様
「こんにちはー、山野農園です」
「いらっしゃい」
三月末の水曜日、いつものように木漏れ日亭に配達に行くと、ちょうど最後のお客さんが帰るところだった。
夫婦らしきふたりとすれ違いざまに軽く会釈を交わし、外まで見送る英二さんと微笑み合いながらカウンターに段ボール箱を置く。
すぐに戻ってきた彼は、「座って」と言いながら調理場に入ってケトルでお湯の準備をし、沸くまでの時間を惜しむように片付けが終わっていないテーブルに向かった。
調理場を横目で覗けば、汚れた食器が積み上げられている。
「私、洗い物とか手伝いましょうか?」
「え?いや、大丈夫だよ」
申し訳なさそうに微笑まれたけど、昨夜は団体客の予約が入っていたことを聞いていたし、調理場の状況を見れば今日の忙しさも安易に想像できた。
「私が手伝いたいんです。邪魔じゃなければ、入らせてもらってもいいですか?」
だから、少しでも英二さんの役に立ちたくて笑顔で尋ねると、彼は悩むような顔をしたあとで頷いた。
「いらっしゃい」
三月末の水曜日、いつものように木漏れ日亭に配達に行くと、ちょうど最後のお客さんが帰るところだった。
夫婦らしきふたりとすれ違いざまに軽く会釈を交わし、外まで見送る英二さんと微笑み合いながらカウンターに段ボール箱を置く。
すぐに戻ってきた彼は、「座って」と言いながら調理場に入ってケトルでお湯の準備をし、沸くまでの時間を惜しむように片付けが終わっていないテーブルに向かった。
調理場を横目で覗けば、汚れた食器が積み上げられている。
「私、洗い物とか手伝いましょうか?」
「え?いや、大丈夫だよ」
申し訳なさそうに微笑まれたけど、昨夜は団体客の予約が入っていたことを聞いていたし、調理場の状況を見れば今日の忙しさも安易に想像できた。
「私が手伝いたいんです。邪魔じゃなければ、入らせてもらってもいいですか?」
だから、少しでも英二さんの役に立ちたくて笑顔で尋ねると、彼は悩むような顔をしたあとで頷いた。