狡猾な王子様
並んで洗い物をしていると、なんだか新婚さんみたいだな、なんて思ったけど、慌ててそんな妄想をかき消した。


どれだけ浮かれているのかは、自分自身が一番よくわかっている。


英二さんの想いを知り、彼の恋人になれた。


その夢のような現実をまだ信じられない日もあるけど、どうしたって舞い上がってしまうのだ。


そもそも、絶対に実らないと思っていた恋が実を結んだのだから、浮かれないなんて無理な話。


寝ても覚めても頭の中は英二さんのことでいっぱいで、油断すれば心がふわふわと揺れて、ついつい口もとが緩んでしまう。


因みに、彼との関係が変わったことに真っ先に気づいたのはやっぱり秋ちゃんで、早くも春ちゃんとなっちゃんは疎か、両親にも筒抜けだった。


秋ちゃんいわく、私がわかりやすいらしいけど、大家族にはプライバシーなんてないのかもしれない。


家族の視線が恥ずかしくてちゃんと話せなかったのに、それでもみんなはとても喜んでくれていたから、筒抜けにした犯人に対しては目を瞑ることにした。

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