狡猾な王子様
「兄が三人もいますし、いずれは誰かが継ぐと思います。兄たちのお嫁さんもすごく協力的なので、誰かが継いだら私の手は必要なくなりますから」


誰が継ぐなんて決まっているわけではないけど、三人ともそのつもりでいるのはなんとなくわかっている。


だから、春ちゃんもなっちゃんもわざわざ敷地内に家を建てて、秋ちゃんも地元で就職したのだろう。


家族も家業も好きだから寂しさはあるけど、私は継ぐほどの覚悟は持てないし、両親や祖父母も兄たちに任せるつもりなのは知っている。


「できれば忙しい時期には手伝いたいですけど、いずれにしてもその時になってみないとわからないので……」


「でも、野菜ソムリエの資格は、実家のために取ったんじゃないの?」


「それもありますけど、どっちかと言うと趣味に近いです。せっかくだから、野菜をメインにしてるカフェとかで働けたらいいんですけどね」


実家から通える距離にカフェがないことを知っているから曖昧に笑ってみると、不意に彼がどこか神妙な面持ちになった。

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