狡猾な王子様
2.彼の誠意と私の覚悟
〈彼の誠意と私の覚悟〉
*****
家族全員と遊びにきていた南ちゃんの視線が、無言のまま私たちに集まる。
いつもと違うのは居間ではなく客間でテーブルを囲んでいることと、私の隣にはスーツを着た英二さんがいること。
異様に緊張している私は、家族と南ちゃんを相手にまともに口を開くこともできなくて……。
「少し前から、冬実さんとお付き合いをさせていただいております。ご挨拶とご報告が遅くなってしまい、申し訳ありません」
視線を彷徨わせていると、彼が座布団から下りて祖父母と両親を順番に見てからはっきりとした口調で話したあと、頭を深々と下げた。
しん、と静まり返った客間。
いつもは賑やかな我が家も今日ばかりはさすがに沈黙せずにはいられないようで、英二さんの言葉に誰ひとりとして応える素振りがない。
もちろん無視しているわけではないとはわかっているけど、隣にいる彼をなんとかフォローしたくて思い切って口を開いた。
「あの……ちゃんと報告してなくてごめんなさい」
緊張と恥ずかしさで顔が熱くなって、次の台詞に詰まってしまう。
家族の前で恋人を紹介することがこんなにも恥ずかしいものなのだと知らなかったから、どんどん熱くなる全身のせいで頭が真っ白になりそうだった。
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家族全員と遊びにきていた南ちゃんの視線が、無言のまま私たちに集まる。
いつもと違うのは居間ではなく客間でテーブルを囲んでいることと、私の隣にはスーツを着た英二さんがいること。
異様に緊張している私は、家族と南ちゃんを相手にまともに口を開くこともできなくて……。
「少し前から、冬実さんとお付き合いをさせていただいております。ご挨拶とご報告が遅くなってしまい、申し訳ありません」
視線を彷徨わせていると、彼が座布団から下りて祖父母と両親を順番に見てからはっきりとした口調で話したあと、頭を深々と下げた。
しん、と静まり返った客間。
いつもは賑やかな我が家も今日ばかりはさすがに沈黙せずにはいられないようで、英二さんの言葉に誰ひとりとして応える素振りがない。
もちろん無視しているわけではないとはわかっているけど、隣にいる彼をなんとかフォローしたくて思い切って口を開いた。
「あの……ちゃんと報告してなくてごめんなさい」
緊張と恥ずかしさで顔が熱くなって、次の台詞に詰まってしまう。
家族の前で恋人を紹介することがこんなにも恥ずかしいものなのだと知らなかったから、どんどん熱くなる全身のせいで頭が真っ白になりそうだった。