狡猾な王子様
たった一言で黙り込んだ私の手に、英二さんの手がそっと重ねられた。
顔を上げて右隣を見ても目が合うことはなかったけど、大丈夫だよ、と言ってくれている気がする。
「大切な娘さんと仕事上の関係から個人的な関係になってしまったので信頼していただけないかもしれませんが、僕なりに真剣な気持ちでお付き合いさせていただいていますので、どうか許していただけないでしょうか」
「わ、私からもお願いします!もちろん、仕事には影響がないようにするから」
再び頭を下げた彼に倣うように、私も勢いよく頭を下げる。
「い、いやいや!ふたりとも頭を上げなさい」
「そうよ!ほら、そんなことしなくていいのよ!」
程なくしてハッとしたような両親の声が耳に届き、ゆっくりと顔を上げると、英二さんも同じようにしている気配がした。
「木藤さん、なにもそんなに畏まらなくても大丈夫ですから。たしかに冬実は唯一の女の子ですが、もういい歳なので交友関係にまでいちいち口出すつもりはないですし、これと仕事とはまた別のことですよ」
お父さんはいつもと変わらない笑顔だったけど、彼は真剣でいてくれているからこそ戸惑いもあるようで、緊張の面持ちのまま両親を見つめていた。
顔を上げて右隣を見ても目が合うことはなかったけど、大丈夫だよ、と言ってくれている気がする。
「大切な娘さんと仕事上の関係から個人的な関係になってしまったので信頼していただけないかもしれませんが、僕なりに真剣な気持ちでお付き合いさせていただいていますので、どうか許していただけないでしょうか」
「わ、私からもお願いします!もちろん、仕事には影響がないようにするから」
再び頭を下げた彼に倣うように、私も勢いよく頭を下げる。
「い、いやいや!ふたりとも頭を上げなさい」
「そうよ!ほら、そんなことしなくていいのよ!」
程なくしてハッとしたような両親の声が耳に届き、ゆっくりと顔を上げると、英二さんも同じようにしている気配がした。
「木藤さん、なにもそんなに畏まらなくても大丈夫ですから。たしかに冬実は唯一の女の子ですが、もういい歳なので交友関係にまでいちいち口出すつもりはないですし、これと仕事とはまた別のことですよ」
お父さんはいつもと変わらない笑顔だったけど、彼は真剣でいてくれているからこそ戸惑いもあるようで、緊張の面持ちのまま両親を見つめていた。