狡猾な王子様
手を繋いでベッドに促された私は、鼓動が大きくなっていくことを自覚しながら、英二さんの後についていった。


怖くないと言えば嘘になってしまうけど、それ以上に彼に抱き締めてほしいという気持ちの方が強くて、きっと恐怖心なんてすぐに忘れてしまえると感じていた。


「好きだよ」


言い終わると同時に塞がれた唇から、英二さんの熱が伝わってくる。


腰掛けたベッドが小さく軋む音を聞きながら、何度もキスを交わした。


そのままゆっくりと体を倒されてベッドに背中を預けると、彼に真っ直ぐ見下ろされて全身が沸騰しそうなほどに熱を帯びた。


見慣れない光景と、英二さんの体温。


重なる体と、甘いキス。


彼をこんなにも近くで感じたことがないから、与えられる重みにすらドキドキした。


触れられることが恥ずかしくて堪らないのに、放してほしいなんて思わない。


ふたり分の吐息が荒くなっていく中で、ただただ「好き」と何度も唇に乗せた。


この体に初めて刻まれた痛みすら愛おしいなんて、きっとどうかしている。


それでも、英二さんをもっともっと近くで感じていたくて、薄らいでいく意識を手放さないように必死に彼にしがみついていた──。


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