狡猾な王子様
「お前ら、なんでここにいるんだよ!」


「兄貴が母屋にいたらおかしいか?」


「その前に、いつから聞いて……いや、待て!答えなくていい!」


ククッと意地悪な笑いを零すなっちゃんに、秋ちゃんが深いため息を吐きながら心底嫌そうな顔をする。


「昔はふうをいじめてばっかりだったのに、兄貴らしくなったなぁ」


「そうそう。それで、よく僕たちが叱ったよね」


なっちゃんと春ちゃんは楽しげに笑って、それぞれに持っていた缶ビールを開けた。


「で、なんの話してたの?」


「白々しいな。どうせ聞いてたんだろ」


ニコニコと笑う春ちゃんに、秋ちゃんはブスッとしながら顔を背ける。


「僕はさっき来たとこだから、最後の方しか聞いてないよ。ここに入ろうとした僕を止めた夏は、いつからいたのか知らないけど」


「俺も途中からしか聞いてないって」


秋ちゃんの態度を気にすることなく微笑む春ちゃんはともかく、恐らくなっちゃんは最初から聞いていたのだろう。

< 53 / 419 >

この作品をシェア

pagetop